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あなた side
樹くんから逃げるように家の前から走り出した私。
涙が風に乗って、空気に溶けていく。
「…はぁっ、はあっ、」
足が動くまま、脳が指示するまま走っていたらいつのまにかたどり着いていた場所。
いつもほっくんと来る思い出の公園。
沢山お花が咲くこの国営公園は、ほっくんのお気に入りなんだ。
ふと視線を動かすと、視覚の端に写るもの。
この前ほっくんがつんつんしてたちっちゃなちっちゃなお花。
私もほっくんを真似するように、人差し指の第一関節にも満たない花にそっと触れてみた。
それだけで蘇る、温かい彼の笑顔。
植物や生き物が大好きで、興味があることにまっすぐ惹かれていく彼。
たかい空にぐーっと手を伸ばして、何かを掴み取ろうとする彼。
私の問いかけに、たまーにうんうんと頷いてくれる彼。
全部全部私の中にいるほっくんが心で広がって弾けた。
こんなにこんなにほっくんのことが好きなの。
辞められるはずなんてないの。
「……すき、」
溢れた、好きは道端の花だけ知っている。
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作者名:ばにら | 作成日時:2021年10月21日 11時