微睡み (ページ26)

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黒 side

「…そ。気をつけろよ。先生には俺から言っておくから。」

樹はこんな時でも適切な距離感を保ってくれる。

こくり、と頷いて席を立つ。

しかし、一歩足を踏み出した瞬間に襲ってくる鋭い痛み。

『…ぅ゛っ、！』

「北斗！！」

俺は立っていられなくてそのまま机に手をついたが、姿勢を保てず椅子と机を薙ぎ倒しながら崩れ落ちた。

教室中に大きな音が響いて、すぐにクラスがざわめきだす。

こんなに酷い発作久しぶりだ。

心臓を絞られるように痛い、息が出来ない。

「北斗、ネクタイ緩めるな？俺にもたれていいから。」

けれど床に叩きつけられる前に樹が抱きとめてくれたらしく、俺は樹の腕に収まっていた。

『あ゛ーっ、…ぅうっ、』

声を抑えられない程の痛み。意識が飛んでしまいそうだ。

「…がんばれ北斗、ちゃんと心臓動いてっからな！！大丈夫だから。」

樹の温かな手が、俺の胸元をゆっくりと滑る。

『んはっ、……ぅ゛ぅ、』

「俺がついてるから、何も怖いことなんてねぇよ。」

あぁ、あったかい。

擦られた皮膚は熱をもってほんわりと温かい。樹の優しさが染み渡っていく。

『じゅ、ぃ……』

「お前は生きんの。絶対死なねぇの。」

やっぱり俺、普通級に来て良かったわ。

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