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あなた side
「これ、この前の発達検査の結果。お前には見せとくわ。」
日曜の朝早くからインターホンが鳴って、ドアを開けると立っていたのは樹くんだった。
ほっくんの年子のお兄ちゃん。
期待と不安が織り混ざった気持ちで、手渡された紙をめくる。
たくさんの文字がずらりと並んでいて、どう見たらいいか戸惑っていた私を見透かしたように樹くんが一言。
「北斗の頭の中は、1歳児だよ。」
「去年はもう少し高かった、よね。」
「実年齢との差が開いたから。さらに低く認定されてる。」
「…そっか、そっか。ありがとうわざわざ見せにきてくれて。」
分かっていたことだけど、ほっくんは私のことなんて理解できていないのだとまた改めて突きつけられたようで苦しくなる。
私は、手の中の紙をそっと折り直して樹くんに手渡した。
「俺さ、今からわざと酷い事言う。でも、お前には幸せになって欲しいから、聞いて。」
「北斗は、愛とか恋とか分かってないと思う。」
「好きって気持ちはあっても、それに特別な意味ってないんだと思う。」
分かってるよ。そんなのずっと前から。
叶わないなんて、私が1番分かっててそれでも隣から離れることなんてできないの。
「……だめなことなのかな。障がいを持っている人を好きになることって。そんなに、おかしいこと、?」
それは誰よりも私がほっくんの良いところを知っているから。
障がいなんかで、打ち消されないほっくんの生命力を知っているから。
樹くんは私を否定したくて言っているんじゃないって分かってる。
だからこそ、苦しい。
私の気持ちの行き場はどこにあるのだろう。
「A……っ」
この恋心は、簡単に捨てたくない。今まで私の全部をかけて育んできた。
どうしようもない、とどうにかしたいがぐちゃぐちゃに混ざって。
私の頬をするりと滑り落ちていった。
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作者名:ばにら | 作成日時:2021年10月21日 11時