微睡み (ページ18)

今日:40 hit、昨日:85 hit、合計:316,449 hit

◎ 心拍　［桃］ページ18

赤 side

今年は季節が夏か冬しかなかったなぁと思うほど極端な気温の変化。

まだ10月下旬だというのにふわふわの羽毛布団が手放せない。

目覚めるとなんだか寒くて、隣に居るべき人がいないからだと気がつく。

リビングから聞こえるピアノの音色に誘われるように、底冷えする廊下を進む。

ドアを開ければ、朝日に照らされながら音を奏でる姿がそこにある。

また聞いたことのない曲。いつも間に覚えてしまったのだろう。

俺の気配を感じるとすぐに演奏が止まる。

「大我、早かったね。あまりよく、眠れなかった？」

『……んーん、きょう、ジェシーとミュージカル、』

「そうだったね、早く準備しなくちゃいけないもんね。」

薄手のサテンパジャマに白いカーディガンを羽織った彼がゆっくりとピアノの前から歩いてきて、俺の服の裾を控えめにつまむ。

『ジェシー、おはよう。』

「うん、おはよう。」

急に思い出したように朝の挨拶をする大我。

『ジェシーと、ミュージカル。』

またぽつりと呟いてキッチンの奥に消えていった。俺との約束を大切にしてくれていることがとっても嬉しい。

・