5、音楽室の段 ページ5
「やっと音楽委員会にも予算が入った〜」
ほっとしたのか、Aはいつにも増して上機嫌だ。
予算の袋を持って音楽室に入って行くと、畳の上で横になりながら煎餅を食べている湯釣を見つける。
「お、やっと音楽委員会にも予算が入ったか。全く文次郎は何をくずくずとしてたんだ」
「音楽室での飲食は可能ですけど、食べカスを溢すのは厳禁です」
「ごめんごめん。この煎餅硬くてな」
特に悪気はないのか、全くもって反省していない湯釣。
いつもの事なのでAもそれ以上は何も言わぬが、予算については口を開く。
「特例で今回だけは私が受け取りました。次回からはちゃんと湯釣先輩が受け取りに行ってくださいよ?潮江先輩も怒ってましたからね」
潮江が怒っていた、そう言うと湯釣の反応は変わってくる。
「またあいつ怒ってるのか?!だから老け顔なんだ。怒ると眉間のシワが増えるぞー。今度そう言っといてくれA」
「言いませんから。早く楽器を磨いてください」
Aは湯釣をスルーすると、横笛とワックスと布巾を持って畳に座る。
「いや、A。楽器磨きは明日でいい」
「じゃあ今日は何をするんですか?」
「そりゃあ勿論、」
「鍛錬ですか?」
湯釣の言葉を遮ってAが平然と続けると、感心したように何度も頷いた。
「小平太には朝伝えておいた。校庭に集合しているらしいから、早く行って来い」
音楽委員会恒例の鍛錬。
それはあの過酷な体育委員会に混ざっての鍛錬だ。
しかしそれを行うのは五年生のAだけである。
その間六年生の湯釣は自由行動。
四年生で三つ子の日和、伊織、小鞠は残った仕事を行う。
「なんで私だけなんだろ」
流石に六年生には逆らえぬのだろう。
Aは横笛とワックス、布巾を元の場所に戻すと、校庭へと駆けて行った。
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作者名:もやし | 作成日時:2020年12月13日 20時