14、スリルのない任務の段 ページ14
何故学園長は、Aと七松で任務に行かせたのだろうか。
恋仲と言う噂を耳にして、気を遣ったつもりなのか。
Aからしたら大きなお世話だ。
「A！次は甘味処に行こう！」
「りょーかいでーす」
いくら七松との距離が近くなったと言えど、七松が面倒な人物と言うのに変わりない。
しかも今回の任務、何も危険ではない。
わざわざ上級生に行かせなくてもよいだろうに。
「やっぱり気を遣ったつもりなんだろうな……」
もはや呆れて何も言えぬ。
先程からうどん、焼き豆腐と回って次は甘味処に行くらしい。
その間七松は何か嬉しいのか、笑顔を絶やさない。
Aは不思議に思うも、任務内容の方が納得がいかない。
「いやー学園長も素晴らしい任務を任せてくれたな！」
「別に素晴らしくなんてないですよ。もっとスリルのある任務がよかったです」
「まぁそう言うな。今回は学園長の奢りなのだから」
正直にAが述べると、七松は少し困ったような顔をする。
何せAも今回の任務に喜んでいると思っていたからだ。
「でも任務が“街の美味しい店を探れ”なんて……」
そんな事は下級生でも十分に真っ当できる任務。
きっと学園長の事だ。
忍術の勉強で忙しい二人に、少しでも恋仲としてゆっくりと過ごせる時間を与えようとでも思ったのだろう。
Aは何度目か分からぬ溜め息をもう一度吐いた。
「Aは嫌か？街の美味しい店を回るのは」
「嫌ではありませんけど、」
そこまで言い掛けて口を閉ざした。
「……何にもありません。すっごく楽しいです！」
思ってもない事を口にする。
いくらAでも、七松のあんな悲しそうな顔を見ればそうなる。
「そうか！では早く甘味処に行くぞ！」
七松はまた嬉しそうに笑うと、Aの手を引いて甘味処を目指した。
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作者名：もやし | 作成日時：2020年12月13日 20時
