５、バレている心 ページ5
「木葉先輩、」
「な、何だよそんな深刻な顔して」
今日も普段通りの練習が始まる。
十分の休憩に入ると、Aはマネージャーの仕事を済ませてから木葉の元へ駆け寄った。
「だって深刻なんですもん」
「どーせ木兎の事だろ？」
「……ちょっと京ちゃんの説教に行ってきます」
「赤葦からは何も聞いてねぇよ。Aの態度でバレバレだって。多分他の部員も気付いてると思うし」
衝撃的な事実を耳にしたAの顔は一気に青ざめていく。
「……尾長ぁ！木葉先輩が言った事本当、？」
「本当です」
「嘘って言ってよ馬鹿尾長！」
「そんな事言わないでくださいよ」
すぐさま隣に居た呆れ顔の尾長に確認を取る。
「因みにさ、どーいう態度でバレてるの、？」
「顔赤くなったりとかですかね。あとは木兎さんと話したあとはほぼ百パーセントの確率でスキップとか鼻歌歌ってます」
とんだ失態を犯してしまったと、今更ながら頭を抱えるA。
「先輩も尾長も分かってたなら教えてくださいよ」
「だってあのハキハキしてるAが木兎に弱いとかネタでしかない」
「先輩怒りますよ？！」
笑いが止まらないのか、木葉はAを宥める事さえも出来ない。
「Aさんの意外な一面が見れて皆新鮮だったんだと思いますよ」
「……尾長ぁ！」
代わりに尾長が処理をすると、Aは嬉しそうに尾長を抱き締める。
「苦しいですよ」
尾長もAの扱いに慣れてきたのだろう。抱き締められてもこんなものだ。
「最近Aと尾長、仲良いよなー」
「そうですね。尾長もAに慣れてきたみたいですし、Aも尾長がお気に入りみたいですね」
「へーぇ」
何かが不満なのか、木兎は納得がいかぬような顔をする。
「どうしたんですか、木兎さん」
「いやさ、俺にはあんな態度取らないなぁって」
あんな態度とは、AのOFFで抜けている部分の事だろう。
流石のAでも、好きな人の前では飾りたいようだ。
「……木兎さんが主将だから緊張でもしてるんじゃないですか？」
このままではしょぼくれモードが発動しそうな為、先手を打った赤葦。
それがのちにAの得になるとも知らず。
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作者名：もやし | 作成日時：2021年3月10日 22時
