好きと気付いたバレー馬鹿【木兎光太郎】 (ページ48)

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48、突然のページ48

「……先輩として。先輩として好きなんですよ」

今にも泣き出しそうなA。
何故こんな事で涙目になっているのか、自分では良く分かっていた。

「俺は違う」

先程までとは打って変わって、木兎は真剣な表情となる。

「俺は後輩としてじゃなくて、Aが好きだ」

当然Aは驚く他ない。
今まで自分の事で精一杯だったのだ。木兎が自分を好いている何ぞ考えた事もあったが、確信を持った事は一度もない。
何を自分は考えているのだと鼻で笑っていた位だ。

「Aが好きだ」

「に、二回も言わないで下さい！」

体温が急上昇していくのが分かる。
自分は今照れているのだ。そう実感すると、余計に暑くなって仕方がない。

「いや言う。もう吹っ切れた！」

「吹っ切れるの早いです！」

「Aが好きだ！」

「もう！！」

木兎の大声はバス内に響き渡る。
勿論赤葦を除いたメンバーはにやけ顔。

「やっとか木兎」

「長かったな～」

「で、どーすんだよA！」

「今彼振って、付き合うのか？！」

とまぁ様々な意見が飛んでくる。

「返事はいらねぇ！」

しかし意外な事に、木兎がこう述べたのだ。

「今は、だけどな」

きっと木兎も気付いているのだろう。
考える時間、向き合う時間をAが欲している事に。

「では仲直りは成立ですね」

「お、そーだな！A、仲直りだ仲直り！」

赤葦の一言で、二人はギクシャクしていた空気からいつも通りのほのぼのとしたものに変わった。
けれどもそれは見掛けだけ。

「やっぱ私可笑しい……」

そう小さく呟いたAの声は、誰の耳にも入る事なく消えていった。