好きと気付いたバレー馬鹿【木兎光太郎】 (ページ2)

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木兎には好きなものがある。
一つ目はバレーボール。
二つ目は焼肉。
三つ目は、

「A～！！」

そう、Aである。
決して付き合ってる訳ではないが、Aは最近木兎のお気に入りだ。

「木兎先輩！女バレ、今日筋トレなので男バスが半分体育館使うらしいですよー」

「じゃあAと会えないのか？！」

「今会ってるじゃないですかw」

「そーだけどよー」

口を尖らす木兎に、Aは腹を抱えながら宥める。
なかなか笑いが堪えられないAは、はたから見れば変人だ。
別に笑う所など一切ないとも思うが、Aにはつぼる部分があったらしい。

「木兎さん。なんでここにいるんですか……」

すると、赤葦が呆れ顔で二人に混ざる。

「だってAに会いたかったんだもーん」

「会いたかったんだもーんじゃありません。ここは2年の廊下ですよ？しかも木兎さん、次体育ですよね？」

「そーだった！！リレーじゃん！じゃあなA、赤葦！」

風の様に去って行く木兎の後ろ姿に、赤葦は溜め息を漏らした。
Aはと言うと、やっと笑いがおさまったのか、荒い呼吸を整えている。

「ほらAも。次Aが苦手な英語だよ」

「なんか課題あったけ……？」

「もちろん」

基本無表情の赤葦が、一瞬だけ微笑んだ。
それはもう恐ろしいとでしか表せられない笑みで、Aはぞっとすると、顔の前で手を合わせた。

「怒られるの承知で言うけど、写させてください！」

当然のごとく説教を受けるAだったが、これまた当然のごとく赤葦のノートを受け取った。

授業が開始すると、グランドからは木兎の馬鹿デカい声が聞こえてくる。
Aは赤葦に感謝しつつ、教師に当てられた部分の英文を答えた。

「……なんで赤葦/京ちゃん、次体育だって分かったんだろ？」

そしてAと木兎はふと気付いたように、小さく呟いたのであった。