第2話 ページ2
「次の方、どうぞ」
いかにも宗教っぽい雰囲気を醸し出している廊下で待っていると、私の番が来た。
自分の意志で来たはずなのに、もうすでに面倒だと思ってる自分がいる。
しかも任務の帰りだったから鬼殺隊の隊服のままだ。少し浮いてるような気がする。
「失礼します」
適当に話して帰ろう。
「おや、君は初めて見る顔だね。しかも…」
部屋に居たのはなんと
「鬼殺隊の子が来るとは」
瞳に上弦弐と書かれた鬼だった。
ここで私が取るべき正しい行動はすぐに日輪刀を抜いて鬼の頸を斬ること。
でも先程まで死ぬことを考えていた私にそんなことをする気力はなかった。
それに、柱でもない私が一人で上弦の鬼を倒せるわけがない。
「…斬らないのかい？」
「斬りません」
「どうして？君は鬼殺隊でしょ？」
「…私一人で戦っても勝てる相手ではないので。無駄な争いはしない主義なんです」
「ふうん…じゃあ、食べちゃおうかな…？」
鬼は一瞬で私の目の前に移動し、私の顎を触る。
「ええ、どうぞ」
私がそう言うと鬼はぽかんという効果音でも付きそうな顔をする。
「どうしました？早くお食べになってください。自分で言うのもあれですが、私は稀血なので美味しいと思いますよ」
「怖くないの？」
「別に。私には感情も生への強い執着も特にありませんので。鬼殺隊の人たちも上弦の鬼相手なら負けても仕方ないと思ってくれるでしょうし」
「じゃあ、何も感じないのかい？」
「そうですね。…ああでも、貴方のその瞳はとても綺麗だと思いますよ」
鬼はまたもやぽかんとした顔をしたと思ったら、今度は笑い出した。
「いいね、君！気に入ったよ！今は殺さないであげる。そのかわり、これからずっと俺の傍に居てよ」
「…は？」
何を言ってるんだこの鬼は。
「困ります」
「なんで？」
「食べるなら今すぐ食べてもらわないと。一応私にも鬼殺隊としての立場はあるんです」
いくら上弦の鬼だからと言って、鬼に寝返ったなんて思われたら鬼殺隊そのものを敵に回すことになる。さすがにそれは避けたい。
それに私はもう生きちゃダメなんだ。
生きる理由もない、鬼の前で刀すら抜かない欠陥人間はいなくなるべきなんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みゆう | 作成日時：2020年6月23日 23時
