第5話 ページ5
目を開けると視界いっぱいに広がる見慣れた天井。
夢が、終わってしまった。
「最後に、これは夢だけど僕は本物だよ。…僕の魂は君の傍にいるから」
彼が、最後に言っていた言葉。
そっか、そうだよね。
辛いのは、私だけじゃないもんね。
…私の呪縛から彼を解放してあげないと、いけないよね。
そうと決まれば、まず最初にやることは決まっている。
それから数日後。
任務がない日に蝶屋敷へ行ったが、竈門炭治郎はもうすでに回復し、任務へ行っているとしのぶが教えてくれた。
「ちゃんと頭は冷えましたか?」
いつもより少し挑発的な笑みで問うしのぶ。
「おかげさまで。…この前は、ごめんなさい」
「その言葉は私ではなく、あの二人に言ってくださいね。私は塀の修理代さえ支払っていただければ水に流しますので」
「ちゃっかりしてるわね」
思わず苦笑いをこぼす。
その後、しのぶから炭治郎が向かったであろう場所を聞き出し、そちらに向かった。
「やっと見つけた」
炭治郎を探し始めて数時間、とうやく見つけた。
炭治郎に近づこうとすると、先程まで前を向いていた炭治郎が勢い良く振り返る。
「あなたは…!」
私の姿に一瞬驚くものの、すぐに戦闘態勢を取る。
背中にある箱を庇うようにしながら、警戒心むき出しの目で私を見つめる。
「よく私に気づいたね。気配消してたのに」
ちなみに気配を消していたのは、意図的にではなくもはや癖みたいなものだ。
「…俺は鼻が良いので」
「へー、すごいんだね。…そんなに警戒しないでよ。今日は話をしに来たんだ」
「話…?」
「うん。といってもここじゃあれだから、甘味処にでも行こうか。おごるよ」
私が甘味処へ歩を進めると、一定の距離を保ちながらも炭治郎はついて来た。
甘味処へ着き、お茶と団子を一口ずつ食べ一息つくと、炭治郎が訝しげに口を開く。
「…それで、話というのは」
「ああ、うん」
私は一度席を立ち、そして炭治郎と禰豆子がいるであろう箱に向かって深々と頭を下げた。
「え、Aさん…!?」
柱が下の階級の隊員に頭を下げるなんて普通ならありえないと知っているのだろう。
炭治郎はとても驚き戸惑っている。
「先日は、私の身勝手な行動で禰豆子さんの命を危険に晒してしまい、本当に申し訳ございませんでした。二人が望むなら、どんな罰も受けます」
私がまず最初にやらなければならないことは、二人への謝罪だ。
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作者名:みゆう | 作成日時:2020年8月16日 6時