第2話 ページ2
炭治郎side
柱裁判から数日後の夜。
怪我の痛みが引き、体を動かせるようになってきた俺は蝶屋敷の庭に禰豆子といた。
禰豆子は池の鯉が珍しいのか、真剣に見ている。
裁判の時はどうなるかと思ったが、今こうして禰豆子といられることに身に収まらないほどの幸せを感じていた。
「みーつけた」
「！？」
塀の上から突然聞こえた女性の声に驚きながらも、視線を上に向ける。
「久しぶり…って言っても数日ぶりか。私のこと、覚えてる？」
その女性は少し不気味な笑みを浮かべたまま塀から降りた。
「…確か、雪柱のAさん」
「そうそう、大正解！嬉しいなあ、ちゃんと覚えていてくれて」
冷や汗が背中を伝う。
だってAさんからは悲しみと妬ましさ、
そして鼻をつまみたくなるぐらい強い恨めしさの匂いと、身動きができないほどの殺気を放っていたから。
「私がわざわざここに来た理由はね、他でもないそこの鬼のことだよ」
そう言ってAさんは鞘から抜いた日輪刀を禰豆子に向ける。
その瞬間、あまり言うことを聞いてくれない体に鞭打って禰豆子を庇うように立つ。
「そんな怖い顔しないでよ。貴方と戦う気はないの。私はその鬼の頸を斬るだけ」
「っどうして！この前の裁判で禰豆子は殺さないことになったじゃないか！！」
「私はあの判決に賛成してないわ。鬼は滅するべき存在だもの」
「禰豆子は人を食べてない！！それはこの前も証明されただろう！？鬼は鬼でも禰豆子は良い鬼なんだ！！」
「関係ないわ」
Aさんの顔から笑顔がすっと消え、次の瞬間には禰豆子の頸を斬ろうとしていた。
「っ！！」
俺はギリギリで禰豆子を押し倒し、Aさんの日輪刀は空を斬る。
どうする、どうする！！
俺の日輪刀は部屋に置いたままだ。戦う術がない。
いや、日輪刀があっても柱相手にまともに戦えるのか…！？
「邪魔しないでよ。間違えて貴方も斬っちゃうじゃない」
見えなかった。
Aさんの動きが。
見えたのは吹っ飛ばされていく禰豆子の身体だけ。
「禰豆子！！」
禰豆子がぶつかった塀は壊れ、砂ぼこりが舞う。
なんて馬鹿力なんだ…！
砂ぼこりが薄まり、禰豆子が見えてきた頃にはもう、Aさんの日輪刀が禰豆子の頸に振り落とされる寸前だった。
「やめろーーーー！！！」
俺はただ、叫ぶことしかできなかった。
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作者名：みゆう | 作成日時：2020年8月16日 6時
