薔薇を抱えて〜LT ページ7
車を走らせながら、なにか手土産・・と考える。
深夜に開いているのはコンビニくらい。
はじめて訪ねるときくらい、気の利いた土産を用意して置けばよかった。
そう思いながらも、Aの夕方のメールで会いたくなった気持ちを抑えることができなかった。
ふと、珍しく深夜まで営業している花屋が目に入る。
こんな時間まで営業している花屋があるんだな・・・。
路肩に車を停めて、店に入ると 普通に営業していた。
「こんな遅い時間でも営業しているんですね？」
そう店員に声をかけると
店員「いまは、コンビニエンスが流行ですからね。他と同じじゃダメなんですよ」
とは言っても、店番は若いアルバイトっぽい青年がひとり、気の利いた花束が作れるとは思えない。
「花束とか・・できますか？」
店員「あぁ・・おしゃれにはラッピングできないかも・・ですが、イチオできますよ？」
それを聞いて、思いとどまる。花束はやめておこう。
ふと、小さな薔薇の鉢植えが目に入った。
「珍しい薔薇だね？」
店員「ああ、この色珍しいでしょ？ ここに水やりの仕方や手入れの方法が書いてあるので、育てるのも簡単みたいですよ？」
鉢植えの横に、プレートがついていて そこに花の説明書きがされている。
「じゃあ、この鉢植え下さい」
店員「ありがとうございます。贈り物ですか？」
「うん・・・イチオ」
店員「じゃあ、リボンつけますね？ 何色がいいですか？」
「キラキラしてる・・・白いリボンってある？」
店員が、色とりどりに並んだリボンを指で追う。一緒にイメージの色を探すと、サテンの白に銀色のラインの入ったリボンが目にとまった。
「ああ、このリボンがいいな」
店員「わかりました」
心配したが、鉢植えをラッピングシートで包んで、その上からさっきのリボンをかけて、可愛らしく結んでくれた。
「ありがと」
店を出て、鉢を抱えて車に乗り込むと、Aの喜ぶ顔を想像して、キモチが逸る。
「結果オーライだな・・」
独り言を言って、車を走らせた。
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作者名：みゆず | 作成日時：2013年6月1日 7時
