公私の公〜LT ページ44
控え室で衣装チェックして、メイクを済ませる。
事務所の広報スタッフが、いま打ち合わせたことを報告してくれる。
ｽﾀｯﾌ「質問形式でやりますけど、全部は答えなくていいですから、事務所側で書面で回答することを伝えてあります。通訳のAしが、その辺はうまく捌いてくれますから」
「ん。今日も多いの？」
SF「多いですけど、ま、いつもと変わらないですよ？ 入隊の件も、ひとつふたつ答えて、「あとは事務所と相談して・・」で・・。あまり、その件に偏られても困るので」
「ん。了解」
SF「あと、適当に他のメンバーに振ってくれるように、Aしに言ってあるので、イトゥク氏も、そのつもりで」
「俺が答えないほうがいいの？」
SF「答えていくうちに、どんどん質問がエスカレートしても・・なんですから」
「ん」
今日の取材の本題は、日本で行われる公演と、そのあとにある・・俺の入隊スケジュール。
取材のオファーが来たときから、その内容は聞かされていた。
Aの通訳で、その取材に答える。
これは、想定外だった。
Aに、その現実を想い知らせることになる。
SF「でも、今日も通訳がAしでよかったですよ」
「そぉ？」
SF「彼女、ほんとに機転が利くし、雅美ヌナが、指名しただけのことはありますね。今日も雅美ヌナ来てますけど、雅美ヌナの指示通りに、打ち合わせでも進行してくれてます」
「そう」
Aの通訳としての同行は、雅美ヌナの根回しが無ければ叶わなかった。
観光ガイドをしているくらいの経歴で、俺たちの専属通訳にするのは、いろいろ無理があったはずだ。広報の幹部で、実権もあるヌナだからこそ、できた根回し。
でも、それに応えるようにAが立ち回っている。
Aが、俺の望みを叶えてくれようと、奔走しているのが愛しかった。
SF「じゃあ、もう少ししたら呼びにきますんで、よろしくお願いします」
「はい」
俺の横でメイクしていたソンミンが、スタッフが出て行くのを待って口を開いた。
SM「ヒョン。僕たちもいるから。全部、背負い込まないでよ？ Aのことも・・」
「ん〜」
苦笑いでソンミンを見ると、ソンミンも微笑んでいた。
SM「ヒョンが頑張りすぎると、Aも頑張っちゃうから。僕たちにしたら、二人が頑張りすぎると心配になるよ」
「ん・・わかってる。みんなにも頼るよ(笑)」
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作者名：みゆず | 作成日時：2013年6月1日 7時
