過去を越える〜LT ページ14
Aが、小さく震えている。
本人に自覚は無いのかもしれないくらい、小さく・・。
日本に行きたくない・・ワケじゃない・・。
でも、コワイ・・・。
Aは、俺の目を見つめたまま・・本音を言う。
その目は、いつものAだと、少しほっとする。
その本音の元が知りたかった。
いつものあどけない柔らかな表情とは違う、大人びた苦しげな顔。
Aの前の恋愛を、想像させて・・俺を不安にさせる・・顔。
あの初めての個人レッスンのとき、初めて見たAの そんな顔。
Aに、そんな顔をさせる・・過去の恋愛。
それが、どうしても気になった。
これを越えないと、俺たちの距離は縮まらない。
いま、手の届く距離にいるAが、一瞬にして遠い存在に感じる・・Aの過去。
「どんな恋愛をしたのか・・知りたいんだ」
A「前にも・・そんな事言ってましたね？ トゥギヒョンは、どうして そんなこと知りたいんですか？」
「Aのことだから・・。そして、それが無ければ、俺たちはこの韓国で出会わなかったから」
A「・・・トゥギヒョン。」
「知りたい気持ちがずっとあって・・Aを見ていると、前の恋愛はどんなだったんだろう？ って すごく気になる。そして、それがどんな風に終わったのか・・・。Aの・・全部を知りたいから」
Aは、一度黙って・・しばらく何も言わなかった。
このまま、言わないのだろうと思っていたら、さっきまでのAの口調で話し始めた。
A「子供っぽい恋愛でしたよ。初めて好きになったひとで・・。私にとって、なにもかも初めての・・ひとでした」
はじめてのひと・・、そのワードに胸が痛んだ。
俺が、どんなことをしても成れない存在。
Aの “はじめてのひと“
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作者名：みゆず | 作成日時：2013年6月1日 7時
