成蘭高校のもう1人の番 (ページ49)

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第48話ページ49

智司 side

『ごめん。』と何度も謝るAはきっと、自分のことを弱いと思っている。

女は弱くても平気なのに。俺だって、まだ弱いところは沢山ある。

今まで俺は、なんのために拳を握ってきたのか分からなかった。でも、今は、理由があって拳を握っている。

今まで、女なんか作るもんじゃないとか、いたところで邪魔なだけだ、と思っていた。

A。
お前に会ってから俺の全てが変わった気がするんだ。

Aも俺も、早くに親を亡くしているから、愛することも、愛されることもそこまで知らない。

でも、こんなに『愛しい』と思ったのはAが初めてだ。

収まっては来たが、まだ少し泣いているAの頭を優しく撫でる。

女の顔を殴る男とか、どういう神経をしているのかを疑う。
話によれば、女からも喧嘩を仕掛けられたという。

仮に、その女が男どもの彼女だとして、怒るのは納得いくが、顔を殴るのはどうかと思う。

Aがどっかの女にやられたとしても、俺はそいつらの顔は殴らないと思う。

Aの顔を殴ったのであれば別だが。

色々と考えているうちにAの涙は止まったらしい。

A「ありがとう、なんかすっきりした。」

若干掠れた声でそう言ったAは、照れくさそうに笑った。

A「もう暗くなっちゃったし、家に泊まって行って？」

『外にいること忘れてた…』と小さく呟いたAを見て、思わず苦笑いをした。

前回泊まらせて貰った時は意識もしなかったが、玄関を開けると、女子らしい匂いが鼻をくすぐる。

『夕飯作ってくるから適当にくつろいでて!!』と慌ててキッチンへ向かったA。

言われた通り、近くにあったソファに座ってテレビをつける。

ニュースを見ていれば、『学生同士の殴り合いが増えている』とテレビの中の人が告げた。

そりゃあ、ツッパリやスケバンだらけのこのご時世、そうなるだろうと心の中で突っ込む。

ただの想像だが、東京とかの都会に出れば、ヤクザが多そうなイメージがある。

冬は、カップルのためにあると言っても過言ではないイルミネーションが出るらしいから、いつかAと一緒に行きたい。

でも、こんな美人が都会に出たら、間違いなくチンピラ共に絡まれる気がする。もっと強くならねぇと。

考え事をしていたら30分も経っていて、『ご飯できたよ』と言う声が聞こえた。