ノラ猫の恩返し (yb×in)

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yb side




慧がいてくれて…良かった。




いのおのトイレをクローゼット、ご飯トレイをキッチンの収納にそれぞれ片付けて



順番にお風呂に入り、ふたりソファーに座る。



慧がそっと寄り添ってくる。
ほんのり香るせっけんの匂いとぬくもりに…ほっとした。


「気分悪くない？」

「うん、もう大丈夫」

「回復してホント良かった」


にこっと微笑んでくれる。






しばらく放心してた後いのおを探しに行こうとして外に出たけど



その後、鍵を忘れたことに気づいて部屋に戻ったら頭痛と立ちくらみがして…そのまま倒れてしまったようで



朝起きた時暑いなとは思ったけど、正直それどころじゃなかったから



お医者さんの慧が適切な応急処置をしてくれて、ホント助かった。




「ありがとね、慧」


「ふふ。俺は恋人兼担当医ですからね、宏太の」


「頼もしいです」



きゅっと、俺の手に触れて指を絡めてきたので、俺も握り返す。



「好きだよ、宏太」

「慧」

「俺は…いのおくんの代わりにはなれないけど」




そんなの





「代わりなんて…思ってないよ…いのおはいのおだし、慧は慧だろ…？」



ぐっと抱き寄せて、唇を重ねた。



「…んっ」



ちゅうと吸ってゆっくり離すと、慧の頬が染まっていた。



「慧が、好きだ」



左手の指を絡めたまま、もう一度顔を寄せあってキスをする。今度は、優しく舌を絡め合う。



「ふぅ…んぅ」




「ずっと…っ、俺のそばにいて…慧」


「…ん、もちろん…っ」




柔らかい唇に、心が癒されていく。



いのおを失った悲しみが…ちょっとだけ…ほんのちょっとだけ、和らいだ気がした。




ふたりベッドに入り、ぴったりくっついて眠る。




ぐちゃぐちゃだった心が、浄化されてくのを感じた。







いのお──





"ありがとう"って…最後に言ってやるんだった。




おまえと出会えて良かったよ。




"気づいてくれてありがとう"っておまえは言ったけど







たくさん人が行き交うなか、俺を選んで声を掛けてくれたんだろ？






慧なら俺を助けてくれるって、慧の姿になったんだろ？






ありがとな。



おまえに貰った命、慧と一緒に大切にするから。






ひとつだけ心残りなのは…





感謝の気持ちを伝えて、笑顔で別れることが出来なかったこと





「…大好きだよ、いのお──」

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