ノラ猫の恩返し (yb×in)

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病院の正面玄関からタクシーに飛び乗る。



まもなく外来診察が始まる…という時に宏太からメッセージが来た。






"いのおがいなくなった"






この1文のみ。

意味が分からなくて、すぐ電話したけど出てくれない。
メッセージを送っても未読のまま。



今日は外来診察は午前中だけだったので何とかこなし、午後休と明日も休みをもらった。

同僚の中島先生に明日の代診をお願いしたら快く受けてくれた…ありがたい。




いのおくんがいなくなったって？




あんなに…再会を心待ちにしてたのに


誰よりも…宏太の無事を願ってたのに





ふたり、とっても幸せそうだったのに





マンションに着いて、宏太の部屋へ向かう。


インターホンを鳴らすが、反応がない。




ドアノブに触ってみたら、鍵がかかっておらず、ドアが開いた。



…外に探しに行ってるのか？



室内は窓が少し開いてたものの、湿度が高いせいか暑く感じる。


中に入ると




「っ…宏太っ！！！」






ソファーの下で、宏太が横たわっていた。





急いで駆け寄り抱き起こすと、身体は熱く汗びっしょりだった。


「こうた！宏太っ！！」


「…う…」



熱中症か…意識はありそうだ。
とにかく身体を冷やさないと！




窓を開け放し、扇風機を回して宏太に向ける。



冷凍庫から保冷剤と氷をあるだけ持ってきてタオルで包み、脇の下と首、足の付け根に当てた。


「宏太？聞こえる？聞こえたら返事して」



空気が入れ替わったところでエアコンを付ける。



しばらく身体を冷やし、冷蔵庫にあったスポーツドリンクをゆっくり飲ますと、ぴくっと動いた。


「…ん…」


うっすら目が開いた。


「宏太！俺だよ？わかる？」


俺の方をゆっくり見る。



「…けい…？」


「そうだよ…！」



良かった…！


コップ一杯のスポーツドリンクを少しずつ飲ませたら、起き上がろうとするので支えてあげる。



「軽度の熱中症だね。ひどくならなくて良かったよ」


「ごめ、ん、おれ…」


「謝らなくていいよ。一緒にベッドまで行ける？」



身体を拭いて着替えをして、ベッドに寝かせる。


水分もしっかり補給出来たし、これで回復するだろう。





「慧…いのおが…」


「いなくなったって、どういう…」

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