ノラ猫の恩返し (yb×in)

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部屋に戻り、ベッドに腰かける。
先生はいのおの待つ家に帰ったかな。




「ふぅ…まだまだだなぁ…ちょっと疲れた」



退院出来たら自宅療養なんか無しですぐ仕事復帰したいと思ったけど、さっき屋上を少し歩いただけで結構疲れてしまった。


さすが先生、体力を戻す為の一週間の自宅療養期間だったのか…。




でも、さっきは久しぶりに外へ出れて嬉しかった。




先生と…二人きりで、たくさん話して、笑って…楽しかった。



すごく、楽しかったんだ。




気づいたら、先生の唇に目が行ってしまって




──夢の中で…この唇に、キス…したんだよな



なんて思っちゃって



無性に…触れたくなっちゃって、必死でこらえてた。





「…好きなんだな。おれ…」




伊野尾先生が好きだ。






不意に、スマホが震えた。



今日は会社の上司と同僚が代表でお見舞いに来てくれることになっていたので、到着した連絡か…？と見てみたら、先生からのメッセージだった。


「…えっ」


慌てて開くと、動画も添付されている。



"疲れてませんか？ 今日はたくさん歩いたからリハビリはほどほどに！"



ふふ、見抜かれてるなぁ。
動画を再生すると、先生の声。


『いのおくーん、おいでー！撮るよー』

『にゃっ！』


いのおが走ってくる。
濡れてる鼻が分かるほどのどアップで思わず吹き出す。


『こらこら、近い近い笑 こっちおいでー』


伊野尾先生がスマホを向けたまま動き出すと、ひょこひょことついてくる。


今度はねこじゃらしで遊んでる。


『こっち向いて。薮さんに顔見せてあげな？』


くるっとカメラの方を向く。零れそうな大きな目がじっとこちらを見てる。


『にゃあん』

「ちゃんと見えてるよ。いのお」


そこで動画が終わった。






いのおと、先生と…一緒にいられたら…毎日楽しいだろうな。




いのおが繋いでくれた、この…出会い。




「ふふ…しばらく恋愛は要らないって思ってたのにな、おれ」





このまま、終わりたくない──

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