春の香り (ページ4)

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結局あの後2人でご飯を食べて勇太は1度家に帰った。

「今日はこっち泊まっていい？」

そんな勇太の言葉からお泊まりをすることになったのだ。

とはいっても昔からずっと一緒で何度も同じベッドで寝たことのある関係。

私も1人では眠れそうになかったから勇太の提案を受け入れた。

ピンポーン

『はーい。』

「ごめん、ちょっと早かったかな？」

『ううん、今あがったところだったから大丈夫。』

「それならよかった。おじゃまします。」

『どうぞ。』

その日は夜遅くまで昔のはなしをした。

私たち3人の幼い頃のはなし。

そんな話をしているとだんだんと瞼が重たくなってきているのを感じた。

「そろそろ寝ようか。さくらおやすみ。」

『おやすみ…。』

その日私は懐かしい夢を見た。

まだ私たちが小学生の頃。

通い始めたばかりの小学校から帰る途中に見つけたある公園。

桜がとてもきれいに咲いていて遊具はないものの私たち3人はいつもその公園に寄り道をしていた。

だけど桜もずっと咲いているわけじゃなくて雨が降って桜が散ってしまった。

それが私はどうしても寂しくて泣いてしまったんだ。

そしたら玄樹が

“また2年生になったら一緒にみれるよ”

そう言ってくれてそれから毎年春はその公園の桜の木の下でお花見をした。

そこまでは本当にあった話。

だけど少しだけ違う部分があった。

急に夢の中では時が進んだ。

場所はさっきまで3人でいたはずの公園。

だけど違うのはそこにいるのは男の子にしては背の低い学ランを着た人。

後ろ姿をみて玄樹だってわかってるはずなのに声をかけられない夢の中の私。

頑張って声を出そうとしても、その場を動こうとしてもびくともしない体。

そしてその男の子はゆっくりと消えていった。

『…っ。はぁっ。はっ…。』

「さくら？大丈夫？すごいもがいてるみたいに苦しんでたよ？」

声が出たと思ったらいつのまにか目が覚めていて私の顔を心配そうに覗き込む勇太がいた。