最低な英雄【フィガロ･魔法使いの約束】

Episode35･Fin ページ39

フィガロ様は椅子から腰を上げこちらへ寄ってきた。

そして


軽く、私の唇へキスをした。


「え」

思考が止まる。

彼の柔らかい感触だけが口元に残った。


「俺は最低な男だよ。って、今言っても遅いけど。

君がそうやって泣いて、でも俺を選んでくれて。普通は慰めたりするところなんだけど。俺、今 興奮してる。」


！？

顔を見上げると、彼は確かに嬉しそうな表情を浮かべている。

「ああでも節操のない男って訳じゃないから。

ただいつでもキスくらい強請って、ってことかな。」

彼のおかげで涙が止まった。
それと同時に私にはひとつ分かったことがある。


「…私だって最低です。
その言葉を貰えただけで、未練なんて無くなっちゃいました。

……あなたを選んでよかった。」


また村のことを思い出して泣くこともきっとある。アルタに対する罪悪感に苛まれることだってあるだろう。

でも私は、村よりフィガロ様を選んだことにもう後悔はしていない。



きっと彼とならいつまでも一緒にいられる。







たとえそれが、“最低な英雄” であっても。



　 𝑒𝑛𝑑

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