Episode 24 ページ26
「チリコンカンできましたよー!」
会話が途切れたと同時に、台所から2人が戻ってきた。どんどん机の上に美味しそうなサラダやお肉が綺麗に並べられていく。
「わぁ……」
北では見たことの無い料理ばかりだ。焼いたお肉の香ばしい匂いや、チリコンカンの少し酸っぱい匂いで部屋が満たされていく。
「すみません、遅れてしまいました。」
レノックスさんも丁度戻ってきたようだ。
折角賢者様が作ってくれた機会、せめて他のみんなの前では明るくしよう。
「いただきます!」
ーー
皆が眠りについた頃。
私は外の空気を吸いながら星空を眺めていた。
北の国とは違う、乾燥していない暖かい空気。
……あの日魔法舎へ来ずにいたら、今日が私とアルタの約束の日だったのだ。
アルタや村の皆はどうしているのだろうか。私が他の人と結婚したわけじゃないし、まだ約束を破ったことにはなってないと思う。けど不安だ。
俯いたまま息を吐くと、頭上から女性の声がした。
「あなたがA?」
バッと空を見上げると、星空に影が浮かんでいる。
魔女…?
「私はグローリー、北の魔女よ。あなたアルタの婚約者でしょう?」
グローリーと名乗る魔女は、なぜ知っているのかアルタの名前を口に出した。
「なんでそれを…」
「あの子は私の弟子なの。
本来なら今日があの子との結婚式だったのよね。乙女の味方をしたいところだけど
あの子、魔力が薄まってるわよ。」
「っ……!?」
魔力が……薄まってる…?
「そ、それは……どういう」
「アルタが魔法使いだってことはもう知ってそうね。そのままの意味よ。あなたは約束を破るんでしょう?」
「っ……」
「今はまだ魔力は消えないでしょうけど、あなたが他の男とくっついたりなんかしたらすぐ消えてしまうわ」
グローリーの言葉でドッと胸が重くなる。
分かってはいたことだが、ハッキリと言われるとどんどん恐怖が強くなってしまう。
「今ここで気持ちを切り替えるって言うんなら、あなたの村まで連れてってあげる。
……だけど、これはあなたの人生の選択でもあるから無理強いはしないわ。」
「…………」
昔からずっとアルタは我慢してた。
…今度は私の番だよね…………。
「北に、連れてってください…。」
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ユリア(プロフ) - 切なくも微笑ましい素敵な作品をありがとうございました!!それぞれのキャラの感情の変化がよく描かれていてとても心に刺さりました。これからも作品作り頑張ってください! (3月25日 14時) (レス) @page41 id: 729d7bbd60 (このIDを非表示/違反報告)
めふぃ - 完結おめでとうございます!そして今まで、切なくも面白いストーリーをありがとうございました! (2022年4月27日 22時) (レス) @page41 id: 19e03b5c2e (このIDを非表示/違反報告)
えれのあ*(プロフ) - あっ、すきです…(死) (2022年4月7日 6時) (レス) @page37 id: 990fe64fbf (このIDを非表示/違反報告)
とくめい - 素敵な作品をありがとうございます。更新楽しみにしています! (2021年9月25日 12時) (レス) id: 0a11424034 (このIDを非表示/違反報告)
めふぃ - ヤバいめっちゃ展開気になる…!!相変わらず面白くて素敵なストーリーです!更新楽しみにしてますね!! (2021年8月8日 12時) (レス) id: 53cc7f4ab0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カシワ | 作成日時:2020年12月31日 11時