Episode 10 ページ11
「このことは、絶対に他言しないで欲しい。」
彼の強い瞳に、私は深く頷いた。
彼は東の魔法使いらしい。東の魔法使いは人付き合いをあまり好まないと聞いた。
……よっぽど大切な話なのだろう。
「分かりました。」
彼は私の顔をじっと見つめ、少しだけ表情を緩めた。
だがそれはほんの一瞬。
再び真剣な表情をして、口を開く。
「あいつは…
フィガロは近いうちに石になるかもしれない。」
「え……?」
この1週間で魔法使いについての基本知識は何となく覚えたつもりだ。
魔法使いが石になるということは、即ち、“死”を意味する。
この人は、私が魔法使いについて何も知らないと思ってからかっているんだろうか?
「石にって…そんな、笑えないですよ」
私は冗談を聞いたように笑って返す。
彼は私をからかっているんだと思って。
……からかいであることに期待して。
「本人から聞いたんだ。この話は僕しかしらない。…50年後かもしれないし、5年後かもしれない。もしかすると来年かもしれない。そうあいつは言っていた。
人のことを簡単に見捨てるような男だ。本当かは分からない。」
「…………。」
なんと返事をしたらいいのか分からず黙りこむ。
期待が外れたことは確かだった。
「少なくとも僕は信じていない。だが、もし本当なら、君が生きているうちにあいつは石になる。
……君はフィガロに惚れているんだろう。」
「えっ」
「正直、もっといい相手がいると思う。このままだとどの道君が傷つくだけだ。」
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ユリア(プロフ) - 切なくも微笑ましい素敵な作品をありがとうございました!!それぞれのキャラの感情の変化がよく描かれていてとても心に刺さりました。これからも作品作り頑張ってください! (3月25日 14時) (レス) @page41 id: 729d7bbd60 (このIDを非表示/違反報告)
めふぃ - 完結おめでとうございます!そして今まで、切なくも面白いストーリーをありがとうございました! (2022年4月27日 22時) (レス) @page41 id: 19e03b5c2e (このIDを非表示/違反報告)
えれのあ*(プロフ) - あっ、すきです…(死) (2022年4月7日 6時) (レス) @page37 id: 990fe64fbf (このIDを非表示/違反報告)
とくめい - 素敵な作品をありがとうございます。更新楽しみにしています! (2021年9月25日 12時) (レス) id: 0a11424034 (このIDを非表示/違反報告)
めふぃ - ヤバいめっちゃ展開気になる…!!相変わらず面白くて素敵なストーリーです!更新楽しみにしてますね!! (2021年8月8日 12時) (レス) id: 53cc7f4ab0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カシワ | 作成日時:2020年12月31日 11時