いつか君に ー己を失った君ー

君らしい ページ5

煉獄side


Aが旅立った翌日
御館様からお呼びがあった


部屋に通されて入ると
御館様は縁側に座っていた




｢おはよう、杏寿郎
急に呼びたしてすまない
君の継子から伝言をこの子達が預かったらしくてね
聞いてもらえるかな？｣

｢御意｣


Aからの伝言………？
何かあっただろうか


｢A様から炎柱様へ言伝です
必ず帰ります
そう伝えるように言われました｣



あぁ、なんてAらしい言葉だろう………

俺の目からは涙がこぼれおちた
何故だろう
なぜこんなに悲しいのだろう
俺にはそれは分からなかった


｢杏寿郎、Aは必ず帰ると
そういったんだよね？｣

｢はい｣

｢なら、師範として屋敷で待ってあげよう
Aは杏寿郎が育てたんだ
大丈夫だよ｣


お館様の優しい言葉に
俺はまた涙が溢れた


｢大丈夫です
Aさんは私たちに芯のある声と
真っ直ぐな瞳でそうおっしゃっていました
必ず帰られますよ｣


Aが真っ直ぐな瞳で言った？
はやくAに会いたい
あの光の無い目に少しでも光が刺したのならば
俺は君に…………


｢ありがたきお言葉
炎柱、煉獄杏寿郎そのお言葉を胸に
Aを屋敷で待つ所存です｣


｢杏寿郎、Aが戻るまで
任務は極力回さないようにするよ
そのかわり、Aをちゃんと迎えてあげるんだよ｣


｢御意｣



俺はお館様達に挨拶をして屋敷を出た



その日の空は快晴で
まるでAの瞳のようで
陽の光がやけに眩しかった

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