ポートマフィアの少女は夜桜姫番外篇「から紅の恋歌」 (ページ50)

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恋歌・弍拾壱ページ50

次の日────────中也とAは嵐山に来ていた

先を歩く中也と少し離れついてくA

A「……」

相変わらず黒い手袋をした中也の手をAは少し見つめる

A【昨日はしてなかったのに】

そう思って小さく溜息をつき顔を上げ中也を見る

人通りが今日も少ない

秋で観光客が多いはずなのに妙に静か雰囲気

風に揺れてカサカサと鳴る竹林の音

気付けばまた少し距離が空いていた

そんな時だった

？「─姫─だ──」

？「──夜───がおるぞ──」

かすれかすれ聞こえてきた何かの声

？「夜桜ノ尊(ヨザクラノミコト)がおるぞ」

三回目にしてようやくはっきりと聞こえてきたカミ(・・)の声

A【あぁ…こんな時に…】

こういう時だけ思い出させられる自分の体に巻き付く「鎖」

それはAに一生絡みつき、苦しませ、解くことすら赦されない鎖

Aはそれを振り払うかのように少し早足で中也を追いかけるそれが＿＿＿＿

"無意味な行動でも"

今まで一切喋ってなく喋りかけようにも"喋りかけるな"とでと言うようなオーラが未だに出てる中也

それでも少しでも近くにいようと近づこうとした時

？「すごーーい！！」

何処からか聞き覚えのある声が耳に入り振り向く

？「おい！待てよ！」

？「ったく姫様は今日もやんちゃだな」

この声は珠紀達

少しづつ声は大きくなってくる

Aは早く行こうと振り向くが中也の姿は見えなかった

A【やばっ！置いてかれた】

小走りに走ろうとする

遼「まだAの方が静かだからいいかもな…」

自分の名前がふと聞こえてきて足を止め振り向く

少しづつ見えてきた皆の姿

そんな時だった

「何してんだよ」

低い男の声が聞こえてきて腕を引っ張られ連れてかれる

それは中也だった

A「ち……中也……！」

中也「……」

無言で中也は先を進んでいく

そして京都を見渡せるような少し開けた道まで来た

そこは嵐山の中と同じく人通りが少ない
いや、誰もいないといってもいいだろうそこにふたりはいた

中也「──おい、A」

急に名前を呼ばれて肩がビクッと反応する

中也「手前、さっき何してたんだよ」

A「知り合いの声が聞こえてきて…」

中也「ﾁｯ……手前は俺だけ見てればいいんだよ」

A「え？」

中也「黙って俺の後ろをついてくればいいんだ。他のところ見んじゃねェ」