彼の正体 ページ9
その日は、雨が降っていた。
芥川は、探偵社が入ったビルの一階にある、喫茶『うずまき』で業務報告書を作っていた。
これまで不要なものは作らず、芥川本人が作る必要がないものはAと交渉し、作ってもらっていた。
だが、とうとう、避けられない書類が出てきたのだ。
業務報告───これだけは調査に関わることのないAには出来ない。
書類作成という強敵との戦いの末、耐えかねた芥川が国木田に電話をかけた頃、その少年は『うずまき』の入り口をくぐった。
芥川と少年──中島敦は出会った。
それから数時間後、芥川は探偵社から姿を消した。
「芥川君が、マフィアに行ったって、本当ですか」
開口一番、Aはそう尋ねた。
栗色の軽い髪は汗で額に張りつき、息は荒く、肩は小刻みに上下している。
今日、Aにバイトの予定はなかった。
自宅のアパートで知らせを聞き、いてもたってもいられなくなった。
事務員の一人がAに事情を説明した。
芥川は今日、『うずまき』でポートマフィアの異能者と戦闘になった。
そのとき妹・銀と仇敵・『黒衣の男』がマフィアにいることを知った。
そして調査員の静止を振り切り、マフィア本部ビルに潜入してしまったのだという。
社長・福沢が全業務の凍結と芥川の援護を命じた。
調査員達はすでに、マフィアビルに向かっている。
「芥川君が云っていた『黒衣の男』は、ポートマフィア関係者だったのか」
Aは、苦々しげに舌打ちする。
事務員は、首を横に振り、事務机に置かれたノートパソコンを指した。
「ただの関係者じゃない。芥川さんは
それは、政府の異能機関、『内務省異能特務課』のエージェントが撮影したものだった。
Aは恐る恐るパソコンを開き、映像を再生する。
画面は、一艘の船を映していた。
船上では、二人の人間が向かい合っていた。
一人は、眼鏡を掛けた禿頭の男。
『異能特務課』の長官、種田山頭火である。
そしてもう一人。
黒い外套を羽織った、端正な顔立ちの青年。
奇妙なことに、彼の片目や首、腕には白い包帯が巻かれていた。
そう、彼は、少し前にAが出会い、そして別れたあの男だった。
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綺月(プロフ) - やっつーさん» ありがとうございます。長い自粛生活もそろそろ終わりが見えてきました。スピードは落ちると思いますが、これからもよろしくお願いします！ (2020年5月20日 16時) (
レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - 桜の下さん» ありがとうございます！作品、拝読させて頂きました。お互い頑張りましょう！ (2020年5月20日 16時) (レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
やっつー(プロフ) - 完結おめでとうございます！これからも健康に気をつけて、頑張ってください！ (2020年5月20日 13時) (レス) id: 7ab3b51d33 (このIDを非表示/違反報告)
桜の下(プロフ) - 完結おめでとうございます！とてもいい作品でした！ありがとうございました！ (2020年5月20日 12時) (レス) id: 28ae7de14c (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - コメント、ありがとうございます。設定や表現は、beast本編を読み込んで、自分らしさと文ストらしさを出そうと作っていった物なので、そう言っていただけて嬉しいです！ (2020年5月20日 10時) (レス) id: 25e76864a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：綺月 | 作成日時：2020年4月19日 15時
