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番外編──たとえば焦がれていたものが存外醜かったとして ページ50

太宰の死によって、男は裏社会の王となったはずだった。
しかし、男は拘束されていた。

そこに、1人の少年が現れる。

少年の両腕は繋がれていない。
少年は自由だ──少なくとも、外見上は。

男は少年にあることを命じた。



そこで目が覚めた。
そうだ、俺は仮眠をとっていた筈だ──



『中原中也は、夢を見ない』



だけどこれは──だって、俺はポートマフィアの首領になっていない。
そのせいで一年もゴタついた……いや、一年で一応収まったってのが奇跡なくらい、マフィア内部は荒れた。

現実じゃない。
だが妄想にしては、あまりに今とかけ離れている。

これが夢なのか──?





何もしなければ、中也が首領の座に着き、それで落ち着く筈だった。
だが何故か、中也はそれを拒否した。

これが夢でないのなら、中也は己が違う選択肢を取った世界を覗き見たのかもしれない。



──だが、それは本当に彼の選択(・・・・)で分岐した世界だったのだろうか?
彼は何故その選択を取ったのか?


答えは太宰治の遺書にある。

そもそも本来の彼は遺書を書いておく人間だったのか?常日頃から死というものに向かっていくような彼は、常に最新の遺書を用意していたのか?

何故彼は命令だけで終えず、その封書を残したのか?
壮大な計画、その後に見つかった文書は、何を示していた?





──あの女だ。
きっと、あの世界に彼女はいない。
その一点こそが、この世界をこの世界たらしめたのではないか。


だから何だっていうんだ。
あの時取らなかった選択肢を悔いる心算はない。
それ以前に、悔いるような選択をしたとは思えない。


瞼を閉じれば、墓石に手を合わせる少女の像が浮かぶ。

探偵社を恨んでいないわけじゃない。
今からでも正式に首領となり、先代の命令をひっくり返すことは不可能ではない。

だが、今はどうにも気が乗らなかった。





やがて、電話が鳴り、首領の位を拒否した青年は部屋から去っていった。

空は僅かに燃え落ち始めていた。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , BEAST   
作品ジャンル:アニメ
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綺月(プロフ) - やっつーさん» ありがとうございます。長い自粛生活もそろそろ終わりが見えてきました。スピードは落ちると思いますが、これからもよろしくお願いします! (2020年5月20日 16時) (レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - 桜の下さん» ありがとうございます!作品、拝読させて頂きました。お互い頑張りましょう! (2020年5月20日 16時) (レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
やっつー(プロフ) - 完結おめでとうございます!これからも健康に気をつけて、頑張ってください! (2020年5月20日 13時) (レス) id: 7ab3b51d33 (このIDを非表示/違反報告)
桜の下(プロフ) - 完結おめでとうございます!とてもいい作品でした!ありがとうございました! (2020年5月20日 12時) (レス) id: 28ae7de14c (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - コメント、ありがとうございます。設定や表現は、beast本編を読み込んで、自分らしさと文ストらしさを出そうと作っていった物なので、そう言っていただけて嬉しいです! (2020年5月20日 10時) (レス) id: 25e76864a2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:綺月 | 作成日時:2020年4月19日 15時

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