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受け継がれてきたモノ ページ22

「私たち夜月家には、代々受け継ぎ、守ってきた大切なモノがある」

 まだ幼かった頃、父は誇らしげにそう教えてくれた。

 父も、目が悪かった。
 今の私と同じ、銀縁の眼鏡を掛けていた。

 父は、異国の電脳使い(プログラマー)を想起させるような、ラフでシンプルな格好がよく似合う人だった。
 白い歯を見せ、目尻を下げて優しく笑う人だった。

 だから、その時は、父にもそんな伝統とか誇りだとかいう気持ちがあったんだなぁ、と、少し意外に思ったものだ。



 『大切なモノ』とは何か、中々父は教えてくれなかった。
 だが、私がずっと聞きたがるものだから、根負けして、少しだけ教えてくれた。



 曰く、その正体は受け継いだ者しか知らない。
 曰く、それは、『或る名前』と共に受け継がれる。
 曰く、受け継いだ者は、それを用いてこの世界を守ってきた(・・・・・・・・・・)



 Aは尋ねた。「今は、誰が持っているの?」

 父は答えた。
「お前だ」



 夜月の一族は何代もの間、それを狙う者の脅威に晒されていた。

 その中で一族は減り、今ではAと、両親だけになっていた。

 父は、なんとしてもそれを守り抜かなければならなかった。
 それが、父と、死んでいった夜月の者達との約束だったからだ。

 だが、娘にも、その先の子供達にも、世界の守人となる責務を、辛く悲しい夜月の歴史を負わせたくはなかった。

 悩んだ末、Aが生まれた時、条件となる『或る名前』を授け、それを受け継がせた。

 娘当人にはそれが何なのか伝えないつもりだった。

 娘は自分の内にあるモノの正体を知らないまま生きていき、いずれは、次の世代へ伝えないまま死ぬ。それはきっと、許される。

 約束をしたのは父であり、娘たちには関係のないことなのだから。


 父は、自分の代で夜月の責務を、娘の代で夜月の力自体を、放棄しようとしたのだ。



 夜月一族が繋げてきたモノ。それは、1つの異能力だった。


 内在するモノ故に持ち主しか実態を知らず、異能力故に名前に依存する。

 そして、その力で忘れさせ(・・・・)、世界を守っていた。


 誰かが真実を知ったことで起こる、世界の自壊から。



「夜月はこの世界で、侵してはいけない領域を護るために用意された一族だった」

決断→←最後のピース



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , BEAST   
作品ジャンル:アニメ
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綺月(プロフ) - やっつーさん» ありがとうございます。長い自粛生活もそろそろ終わりが見えてきました。スピードは落ちると思いますが、これからもよろしくお願いします! (2020年5月20日 16時) (レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - 桜の下さん» ありがとうございます!作品、拝読させて頂きました。お互い頑張りましょう! (2020年5月20日 16時) (レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
やっつー(プロフ) - 完結おめでとうございます!これからも健康に気をつけて、頑張ってください! (2020年5月20日 13時) (レス) id: 7ab3b51d33 (このIDを非表示/違反報告)
桜の下(プロフ) - 完結おめでとうございます!とてもいい作品でした!ありがとうございました! (2020年5月20日 12時) (レス) id: 28ae7de14c (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - コメント、ありがとうございます。設定や表現は、beast本編を読み込んで、自分らしさと文ストらしさを出そうと作っていった物なので、そう言っていただけて嬉しいです! (2020年5月20日 10時) (レス) id: 25e76864a2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:綺月 | 作成日時:2020年4月19日 15時

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