名探偵と少女 ページ12
犯人は某国の軍閥関係者。
彼は既に母国へ逃亡し、消息を絶っていたらしかった。
軍警が領事館に問合せた。しかし、自国から余計な犯罪者を出したくないのか、取り合ってくれなかったそうだ。
少女は、その年齢にしては異常な程深く思考する癖と、異常な程鋭い観察眼をもっていた。
ただ、幼さ故に感情を持て余しがちだった。
一分が過ぎるごとに、両親の死という現実が彼女を追い込んでいった。
深い思考は負の感情を加速度的に増幅させ、観察眼は幼い精神に残酷な事実のみを叩きつけた。
現場から警察署に移動するころには、たった7歳の子どもは頭を抱え、悲痛な叫び声をあげていた。
例え今回は落ち着いても、両親という
乱歩は気づいた。少女は昔の自分だ、と。
自分が福沢の手で名探偵として羽化したように、少女も今、生きるための助けを必要としている。
でも、彼女はあまりにも幼い。
未熟な頭の中で組み立てられた不自然で不完全な世界は、きっと彼女を危険に晒す。
羽を切り落としてしまうこと以外に生きる道がない。
だから乱歩は、少女に約束させた。
考え過ぎないように。
知り過ぎないように。
そして、秘密裏に少女の里親を手配した。
被害者に対する軍警のアフターケアなど、信用できないからだ。
下手すると、天涯孤独の子どもは行く宛をなくし、貧民街で生きることを余儀なくされる。
それがこの街の残酷さだった。
そうならないように、里親を見つける必要があった。
裏で探偵社と連絡を取れ、安全で一般的な職についている人間がいい。
幸い、適切な老夫婦が早いうちに見つかった。
少女は里親と共に県外で過ごし、平和な日常を得た。
学校にも行き、知識を身につけた。
先の大戦の影響もあり、学齢でも学舎に通えない者は沢山いる。
乱歩も福沢の下で落ち着くまで、色々な職場を転々とした。
少女を学校に通わせることは、乱歩の提案だった。
乱歩のお陰で少女は、落ち着きを取り戻した。
そして、親を亡くした子にしては、幸せすぎる学生時代を過ごした。
時間が経ち、少女は一人立ちした。
働き先を考えるとき、少女は自分を救ってくれた探偵に報いることが出来たなら、と考えた。
だから探偵社でのアルバイトを決めた。
その少女が、夜月Aである。
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綺月(プロフ) - やっつーさん» ありがとうございます。長い自粛生活もそろそろ終わりが見えてきました。スピードは落ちると思いますが、これからもよろしくお願いします! (2020年5月20日 16時) (レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - 桜の下さん» ありがとうございます!作品、拝読させて頂きました。お互い頑張りましょう! (2020年5月20日 16時) (レス) id: c6edb3b0cf (このIDを非表示/違反報告)
やっつー(プロフ) - 完結おめでとうございます!これからも健康に気をつけて、頑張ってください! (2020年5月20日 13時) (レス) id: 7ab3b51d33 (このIDを非表示/違反報告)
桜の下(プロフ) - 完結おめでとうございます!とてもいい作品でした!ありがとうございました! (2020年5月20日 12時) (レス) id: 28ae7de14c (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - コメント、ありがとうございます。設定や表現は、beast本編を読み込んで、自分らしさと文ストらしさを出そうと作っていった物なので、そう言っていただけて嬉しいです! (2020年5月20日 10時) (レス) id: 25e76864a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綺月 | 作成日時:2020年4月19日 15時