二つの物質X ページ38
「Hi!阿笠博士!」
阿笠がドアを開けると、そこにはジョディがいた。
「それで、どうしてここに?」
「実は、変なもの拾ったのよ」
阿笠の問いに、ジョディは答える。
「調べてくれないかしら」
ジョディが差し出したのは、あの『時空を歪める正六面体』だった。
「これは!」
「簡単に調べてみたけど、鉄とかアルミニウムみたいなありふれた金属じゃないみたい。FBIで頼もうかと思ったけど、こっちの方が早いと思って」
ビニールに入れられたサイコロ状の物体が、鈍く光る。
「博士」
灰原が、阿笠の方を向いてうなずく。
「ああ。これで完成じゃ!」
阿笠は正六面体を受け取り、嬉しそうに言った。
「クールキッドが、そんなことに……」
事情を聞いたジョディは、あごに手を当てて真剣な顔つきになる。
灰原は、心配そうにするジョディを見て微笑む。
「大丈夫よ。どうやら彼、まだ生きてるみたいだから」
ジョディは心なしが安心した顔になって、少しばかり明るくなった声で漏らした。
「そう!よかった……!」
コナンが生きているなら、赤井も生きているかもしれない。この装置で救出できるかもしれない。
ジョディは胸を撫で下ろした。
「このキューブ……時空を歪めるってことは、私が見つけたこれで行方不明になった人もいるのよね……」
それは恐らく、赤井だ。
赤井が拾おうとした『何か』。それは、この立方体だった。
「もし見つけたら、その時はその人も連れて帰ってきてくれるわね?」
ジョディは灰原の手を握る。
「頼んだわよ」
灰原は、少し驚いて目を開く。
行方不明になった人のことが、そんなに心配だったのか。
FBIの、誰かだったのか?
……いや、そんなことは別にいい。
ジョディが自分を信じてくれている。そのことが、灰原は嬉しかった。
赤井はきっと、戻ってくる。
ジョディの胸には、希望が芽生え始めていた。
翌朝早朝、阿笠と灰原はとうとう装置を起動させることにした。
「いいか、哀君。このボタンを押せば、新一君が迷い込んだその場所にワープできるようになっとる。帰りもまた、同じボタンじゃ。エネルギーの面から考えてチャンスは一度きり、一緒に動けるのは君と新一くんと、あと一人だけじゃ。」
博士は心配そうに、繰り返す。
灰原はうなずく。
「ええ、わかってるわ」
「気をつけて行ってくるんじゃぞ」
「当たり前じゃない。じゃあね、博士」
133人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜 - これめっちゃ現実性あるねぇ (2020年8月30日 20時) (レス) id: 44f3b52daa (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - コナン側、主人公側、互いの立場から来る優位性のようなものがなく、また主人公の心情や周りとの関係性の変化などとても読み応えのあるものでした。読後感はどこか物悲しく、しかし確実に続編への布石を……!このあと続編の方を拝読します!ありがとうございました! (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サブタイトルでちょっと笑って読み始めたのですが、読み進めるうちにどんどん引き込まれて行きました。何より他の二次創作との差を感じたのが、主人公たちのいる世界が「コナン」側の世界とまるで対等であるように描かれていると感じた所です。 (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - ナミさん» 最後まで読んでいただきありがとうございます。続きは……もう少しお待ちください! 作者としても、チーム『マクスウェルの悪魔』には、残された沢山の謎を解決してもらいたいですからね笑 いつも、感想と励ましの言葉をいただけて、とても嬉しかったです。 (2020年6月30日 22時) (レス) id: a7057fda4f (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - 最終回とっても面白かったです。組織の研究所みたいなことを言っていたので今度はトリップかなと続きが楽しみです。続きがどうなるのか?それとも無しなのか?出来れば続いて欲しいです。最後にお疲れ様でした。 (2020年6月29日 4時) (レス) id: 134760d3d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:綺月 | 作成日時:2020年5月9日 0時