隣の大学院生が帰ってこない件 ページ33
「そういえば、最近見ないわね」
阿笠邸では、灰原が博士と話していた。
「見ないって……誰をじゃ?」
「隣に居候してる、沖矢さんよ。ちょっと前まで、よく料理を持ってきてたじゃない」
思い浮かべるのは、『シチューを作りすぎてしまった』といって鍋を持ってくる沖矢だ。
「確かに見とらんのう」
阿笠はそう答えたが、沖矢が少しの間家を空けることは良くあることだ。家の主人である工藤夫妻も帰国してきたし、なんてったって彼の正体は、FBIの赤井秀一なのだから。
阿笠は呑気な顔だった。
しかし、灰原の表情は険しい。
「いつから?」
「最後に会ったのが、確か……そうそう、新一君がいなくなった前の晩じゃ」
そう博士が答えると、座っていた椅子から降りて、上着を取り、玄関へ向かう。
「私、ちょっと隣見てくるわ」
博士は『大丈夫じゃろう』と止めるが、灰原は聞かない。
「工藤君のこともあったし、今は居場所がはっきりしてた方がいいから」
「ちょっと、哀君!」
博士の静止は気にも止めず、灰原は家を出た。
ピーンポーン
灰原が工藤邸のチャイムを鳴らす。
「隣の阿笠ですけど、沖矢さんいらっしゃいますか?」
ピーンポーン
「ちょっと!誰もいないの?」
中々、家の住人は出てこない。
ピーンポーン
「沖矢さん?……あ」
「はーい!ちょっと待ってぇ……あ、哀ちゃんじゃない!」
出てきたのは、工藤有希子。新一の母だった。
「工藤君のお母さん……。えっと、沖矢さんはいる?」
「いーえ?何日か前に『ちょっと出てくる』って言って、それっきりなのよ〜。大荷物じゃなかったから、もう帰ってきてもいいんだけど……」
「それより、新一は元気してる?ここ数日、声を聞いてないのよね〜」
言うべきか、否か。
いや、工藤君なら、余計な心配はかけたくないと思うわよね。
「私も、ここ数日会ってないから……」
もう少しだけ、隠しておこう。
灰原は、そう決めた。
「そう……まあ、あの子なら大丈夫よね!」
有希子は明るく言った。
無事に戻れたら、工藤君に説明させよう。
灰原は、コナンに投げることにした。
矢っ張り、沖矢さんは数日前、姿をくらましていた。
博士の言う通り、工藤君がいなくなった日に彼も消えたのかもしれないわね。
それなら、あの人も同じ所にいるかもしれない。
行方不明が、二人に増えちゃったじゃない。
灰原は、頭を抱えた。
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桜 - これめっちゃ現実性あるねぇ (2020年8月30日 20時) (レス) id: 44f3b52daa (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - コナン側、主人公側、互いの立場から来る優位性のようなものがなく、また主人公の心情や周りとの関係性の変化などとても読み応えのあるものでした。読後感はどこか物悲しく、しかし確実に続編への布石を……!このあと続編の方を拝読します!ありがとうございました! (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サブタイトルでちょっと笑って読み始めたのですが、読み進めるうちにどんどん引き込まれて行きました。何より他の二次創作との差を感じたのが、主人公たちのいる世界が「コナン」側の世界とまるで対等であるように描かれていると感じた所です。 (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - ナミさん» 最後まで読んでいただきありがとうございます。続きは……もう少しお待ちください! 作者としても、チーム『マクスウェルの悪魔』には、残された沢山の謎を解決してもらいたいですからね笑 いつも、感想と励ましの言葉をいただけて、とても嬉しかったです。 (2020年6月30日 22時) (レス) id: a7057fda4f (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - 最終回とっても面白かったです。組織の研究所みたいなことを言っていたので今度はトリップかなと続きが楽しみです。続きがどうなるのか?それとも無しなのか?出来れば続いて欲しいです。最後にお疲れ様でした。 (2020年6月29日 4時) (レス) id: 134760d3d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綺月 | 作成日時:2020年5月9日 0時