奏者×奏者 ページ32
「ああ、これか!」
指先を見ると、確かに硬くなっている。
左手の人差し指、中指、そして薬指。あと、若干小指も。
弦楽器で、弦を押さえる指──金属の弦と何回も触れて、硬くなる指だ。
初めの頃は、痛くなったりしてたっけなぁ。
「でもAさん、初心者でしょ」
「ハハ、それもバレたか……」
私は高校に入ってから、バイオリンを始めた。一年弱では中々上手くならないが、それでも少しは弾けるようになったつもりだ。
オーケストラ部に入ったのは、弾ける楽器を増やしたかったからだ。
吹奏楽なんかと比べると、高校生の部活としてはやっぱり多くない方だし、弦楽器に触れる機会ってあんまりないからな。
「押さえ方がまだ甘いよ」
「そうか、
戦慄の
何というか、お金持ちのボンボン感。
「え?うん」
「少なくとも私よりは上手いでしょ。楽器、休校前に学校から借りてきてるから、教えてよ」
楽器ケースから楽器を出す。
弦を軽く指で弾くと、ボヨヨンと低い音がした。
「うわ、めっちゃ音落ちてる」
今日はしっかり
下からソ、レ、ラ、ミ。
四つの弦の音を、正しい音程にぴったり合わせないと、演奏は出来ない。
ピアノは狂いにくいから、専門の調律士さんがたまに合わせればいいし、電子楽器なら合わせる必要もないんだけどね。
弦楽器や管楽器は毎回合わせないと、合奏なんかとんでもないことになるから。
「コナン君〜もうこんなもんで良いかな」
「
このチューニングってやつ。微調整がめちゃくちゃ難しいんだよ。完璧に合わせるのなんて、諦めたくなるレベル。
上がり過ぎたと思って弦を緩めたら、今度は下がりすぎたり。
「諦めてチューナー出せば?」
「チューナー学校に置いてきた〜。わかるっちゃわかるもん」
問題は音程が分からないことじゃないんだ!
微調整が出来ない所なんだ!!
「よし、こんなもんか」
「じゃあ、弾いてみてよ」
それからは、夕方までバイオリンの特訓だった。
割とスパルタだった、とコメントしておこう。
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桜 - これめっちゃ現実性あるねぇ (2020年8月30日 20時) (レス) id: 44f3b52daa (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - コナン側、主人公側、互いの立場から来る優位性のようなものがなく、また主人公の心情や周りとの関係性の変化などとても読み応えのあるものでした。読後感はどこか物悲しく、しかし確実に続編への布石を……!このあと続編の方を拝読します!ありがとうございました! (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サブタイトルでちょっと笑って読み始めたのですが、読み進めるうちにどんどん引き込まれて行きました。何より他の二次創作との差を感じたのが、主人公たちのいる世界が「コナン」側の世界とまるで対等であるように描かれていると感じた所です。 (2020年8月18日 0時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
綺月(プロフ) - ナミさん» 最後まで読んでいただきありがとうございます。続きは……もう少しお待ちください! 作者としても、チーム『マクスウェルの悪魔』には、残された沢山の謎を解決してもらいたいですからね笑 いつも、感想と励ましの言葉をいただけて、とても嬉しかったです。 (2020年6月30日 22時) (レス) id: a7057fda4f (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - 最終回とっても面白かったです。組織の研究所みたいなことを言っていたので今度はトリップかなと続きが楽しみです。続きがどうなるのか?それとも無しなのか?出来れば続いて欲しいです。最後にお疲れ様でした。 (2020年6月29日 4時) (レス) id: 134760d3d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綺月 | 作成日時:2020年5月9日 0時