某死神少年との遭遇 〜外出は自粛してもらおうか〜【名探偵コナン】

絶対に許さない ページ27

思わず、母さんの顔をみる。
　母さんは続ける。

「だって、いい事何もないじゃない。子供の父親が殺人未遂犯なんて、そんなことできないわ」

　た、確かに……辛い思いをするのは、子供だ。片親だと、妻側の負担も大きい。一時の感情に流されず、冷静に考えれば、その通りだ。

　でも、母さんが恐ろしいのはここから。


「そうして、後で殺すの。絶対に許さない。一度でも自分に殺意を向けてるのに、許すと思う？」

　うん、ごもっともです。

『絶対に許さない』は、哀ちゃんが夫さんに言った言葉じゃなくて、妻さんの真意ってことね。
　ありそうで怖い。

　なにが怖いかって、実際に結婚して子供もいる母さんが言うのが怖い。


「殺すなら、事故死ね。保険金も貰えるし」

　事故死は、殺しの方法じゃありません……


　ほら、コナン君も引いてるよ？

　……本人がいるとは、思ってもいないだろうけど。


　母さんが言うと、本当にありそうで怖いの！！

　マジで父さん気をつけて！！！


「コナン君も哀ちゃんも、そんな簡単に見逃しちゃだめだよ！ちゃんと見張っとかないと……」


　母さん……本人、ここにいるよ〜


「こ、怖っ……」

　ついに、妹が呟く。


　私はコナン君に耳打ちした。

「コナン君、コナン君、絶対に母さんの恨みを買っちゃダメだよ！」

　いやほんと、怖いわウチの母さん。




「……びっくりしたあ。瞳子さんって、結構あんな感じなの？」

　放送が終わり、私の部屋に行くと、コナン君は大きく息を吐いた。

　私は私で冷や汗が出ていた。

「たまに、ね。ブラック母さんが……」

「Aさんの観察力がいかに母親譲りかが分かったよ……」

　コナン君は、まだ緊張が抜けきっていない硬い声だった。


「私が強引に母さんの意見を変えられない理由もわかったかな……？」

　私がコナン君の居候を渋った理由が、これだ。


「ああ、あれじゃ何言ってもコテンパンにやられる気しかしねぇよ」


「言い訳なんか通用しないんだよ……あの人、カンも良ければ頭も良いし、コナン君のこと、騙せてるのが奇跡なくらいなんだからね」

　呆れ気味に、言葉の端を放り投げる。
　コナン君も、精神的に疲れ切った様子で、言葉を放った。

「ハハ、バレてたりして」

「ま、まさか……ね」

　悪いフラグは立てないでくれよ。
　私は何も聞かなかった。うん、そうだよ。

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