某死神少年との遭遇 〜外出は自粛してもらおうか〜【名探偵コナン】

伊達に本ばっか読んでないよ、私 ページ5

「あ、分かった」

　ポン、と手を叩く妹。

「この子の声、コナン君そっくりだ」



　妹は、耳がいい。

　というのも、聞き分けの力が人より抜きん出ているのだ。

　例えば、アニメを見ていて妹が
「この人の声、どっかで聞いたことある気がする」
と言ったとする。

　そういう時、妹は少し考えて、見事同じ声優のキャラクターを当ててしまう。
　百発百中だ。外したことなんてない。


「まさか、本当に」

　平井太郎なんて普通の名前に、疑心暗鬼になっていたけど。

　でも、あの子の焦りようは普通じゃなかった。

　もし、私が乱歩を読んでいて、咄嗟に名前を変えたなら？

　怪しまれないように、普通の名前にしようと考えた結果なら？



　少年が履いているのは、赤い運動靴。
　低学年の子が履くのにはちょっと難しい、紐靴だ。

　自分の経験則で考えるのは良くない。でも、私なんか、脱ぎ着が面倒で、中学になるまでずっと面ファスナーの運動靴を使っていた。
　お洒落で履くにしろ、一年生で紐靴なんてあるだろうか？


　少年がかけているのは、黒い伊達メガネ。
　メガネのレンズの端で、顔の輪郭が途切れていない。だから、このメガネに度は入っていない。

　子どもの近視が問題視されている現代でも、小学生の近視率は低い。メガネやコンタクトレンズの使用率が急激に上がるのは、中学校に入ってからだ。

　花粉症で、花粉が目に入るのを防ぐメガネもあるが、あれは水泳ゴーグルのように周りがガードされる。こんなに大きな伊達メガネにはならない。


「ねえ、おかしな事言っても、いい？」

　アナ雪ばりに頭のおかしなセリフで、賭けに出る。


　少年は、警戒しているように見える。腕を後ろで組んで、目は油断なくこちらを見ている。

　そうだな、あいつが言っちゃったからな、「コナン君」って。

　まあ、違ってたらほんと頭のおかしな女になるけど。

　私は少年だけに聞こえるよう、囁いた。


「もし君が、APTX-4869を飲まされて幼児化した、江戸川コナンこと工藤新一君なら、後ろで構えてる腕時計型麻酔銃をしまって、黙って家に入って」


　少年の、唾を飲み込む音が聞こえた気がした。

補正力ってやつね→←人差し指は人を指さすためにあるんじゃない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す