chapter54 ページ9
私は安室さんを振り切って屋上に逃げ込んでいた。
ちょうど外も暗くなってきて、まもなく後夜祭が始まるためグランドには多くの生徒がいた。
私はそれを見下ろしながらふと昔のことを思い返す。
今でも後悔している。
どうして私はすぐ彼に会いにいかなかったのだろう。
彼の気遣いは気にせず、無理矢理にでも会いに行ってればなにか変わっていたかもしれないのに。
けど、そんなことを今考えてももう遅い。
彼はもうこの世にはいないんだから。
「松田さん＿＿＿」
久々にその名前を口にしたそのとき、
「＿＿松田陣平。」
もう他人の口からは聞かないと思っていた名前が、後ろから突然響いてきた。
声の主は聞き覚えのあるあの人だ。
私は驚きを隠せないまま、ゆっくりと後ろを振り返る。
「…どうして、その名前を？」
そう問うと、
安室さんはどこか寂しげな表情を浮かべて言った。
「＿＿彼とは、古くからの友人だからですよ。」
友人…？
え、安室さんと松田さんが友達だったってこと…？
そんな偶然ある…？
「そして彼は＿＿＿」
その時胸がざわついた。
次に安室さんの口から出た言葉は、とても信じらないものだった。
いや、信じたくなかった。
「＿＿＿君の兄だ。」
頭を思いっきり叩かれてしばらく耳が聞こえない感覚に似ている。
頭がキーンと嫌な音をたてて思考回路が追いつかない。
「え…？いやいや、安室さんそういう冗談は＿＿」
「嘘じゃない、本当だ。」
その真剣な目はとても嘘をついているように見えなかった。
そして、安室さんの雰囲気も少し違う気がする。
というか、別人みたいだ。
「で、でも…兄がいるなんて私聞いたことありません。」
そう反論すると、安室さんは少し近づいて私の目を見た。
私も負けじと見つめ返す。
だけどいつもみたいな優しそうな光はそこにはなくて、少し怖いと思ってしまった。
「＿＿あいつのことが知りたいか？」
松田さんのこと、だよね。
私は迷わず答えた。
「知りたいです。」
知らなければいけない、そんな気がした。
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なみだうさぎ(プロフ) - レモンさん» ありがとうございます！！更新不定期で大変申し訳ないですが、できる限り期待に応えられるよう頑張ります！！ (2018年10月14日 1時) (
レス) id: e3d8bdb6e6 (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - 続編の移行おめでとうございます！私も楽しみに今後の展開待ってます。 (2018年10月13日 23時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なみだうさぎ | 作成日時：2018年7月17日 21時
