感情を失った手毬花 5【ブルーロック】 (ページ49)

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『知らない……、聞いたことのない名前。父親は、私を“私じゃない誰か”として見てるみたいだった』

U-20日本代表との試合後、もう2度と呼ばれないと思っていた名前を聴いた。

「ーーそこにいるのは、“蓮”かな?」

『やっと……、親の呪縛から逃げ出せると思ったのに……、何で、また……』

私はその場で崩れ落ちそうになる。

今の幸せが、全部壊れてしまいそうで怖い。

「……僕と、一緒やね」不意に氷織くんが言葉を漏らした。

私は顔を上げる。彼は私の頬を撫で、続ける。

「僕も、両親の期待とか、失望させる恐怖とかで、ずっと逃げたかったんや。だから、今“青い監獄(ブルーロック)に来れて運が良かったと思う」

『氷織、くんも……』

「だから、もしお互い壊れそうになったとき、全部吐き出さん？思ってることとか、嫌なこと全部」

そんなこと、考えたこともなかった。

誰かに弱音を吐くことは、絶対に駄目だと思っていたから。

「こういう、負の感情を誰かに言うのは怖いけど……、僕、Aちゃんになら言えると思うねん」

そう言って少し恥ずかしそうに微笑む。

……いいんだろうか、誰かに寄り掛かっても。

でも、氷織くんになら、私は……。

『……うん』

気付けば私は、頷いていた。