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私はやっと泣き止み、流れた涙を拭う。

そんな私に、氷織くんは優しく笑いかけて聞いてくる。

「落ち着いた?」

私は無言で頷いた。そして掠れた声で呟く。

『ごめん……、いきなり泣いちゃって』

「そんなこと、Aちゃんが気にすることあらへんよ。Aちゃんはやっと自分を出せたんやと思うし」

私はもう一度小さく頷き、徐に口を開いた。

『……私が、小さい頃のときなんだけど』「……うん」

氷織くんは私を離し、話を聞く体制になってくれる。

『父親は私を、将来同じ仕事にーー、“日本フットボール連合”に就かせたかったみたい。だから、そのために6歳の頃から“完璧”を強いてくるようになった』

『いつも言っていた。“私のようになるには、学力も身体能力も、功績も積み重ねないといけない”って。私はーー、まだ子供だったから、目の前のことに、両親に褒められることだけに焦点を当てていた。でも、成長していくにつれて、分かってしまった』

“私は、親の操り人形でしかないんだって”

『……そして、私は何故か両親に“A”と呼ばれなくなってた。6歳になる前はAって呼んでたのに』

「……何て、呼ばれとったん?」

氷織くんの問いに、私は震える声で答える。

『“(れん)”、って……』

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作者名:メビウス | 作成日時:2023年9月29日 23時

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