感情を失った手毬花 5【ブルーロック】 (ページ41)

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【Aside】

『えっと……、今日は有難う。冴くんと会えてよかった』

私は冴くんを見詰めて言った。

本当は冴くんにも悪いし、電車で帰るとは言ったけど、問答無用に送ってもらってしまった。

後ろには青い監獄(ブルーロック)の建物がある。

「……足りねえよ、全然」

冴くんはボソリと呟く。呟きながら私の頭に触れた。

触れている部分がじんわりと温かくなる。

顔を上げると目が合った。吸い込まれそうな、綺麗な瞳。

『冴くん？』少し寂しげに見えるのは気のせいだろうか。

自然と冴くんの腕に触れる。

『冴くん、……大丈夫？』

声を掛けると、冴くんはハッとなった。

そしてーー、私の腕を引っ張り、自身の腕に収めた。

『……っ！？』

収められた私は動揺で頭がいっぱいになる。

まさか抱き締められるとは思ってもいなかった。

ギュッと逃がさないというように強く腕を回されている。

私は慌てて声を掛けた。

『さ、冴くん……！本当にどうしたの……？』

が、冴くんは何も答えず、肩に顔を埋めてくる。

人の体温が感じ、寒い冬には心地よく感じるほどだけど……。

『冴くん、明日も早いんでしょ？』

私が尋ねると、冴くんはのろのろと離れる。

覗いた彼の顔は複雑だ。

暫く私の髪を撫でていたかと思えば、手に触れてきてそのまま握られる。

中々歩き出さない彼に対し、私は苦笑いを浮かべた。

『どうしたの？私が出来ることならしようか？』

私の言葉を聞いた冴くんは目を見張った後、考え込んだように目を伏せる。

ふと口を開いたが、抑えるように口を閉じる。

そして絞り出すように言った。

「ーーいや、今はいい。どうせ直ぐに叶うだろうしな」

『そ、うなんだ？ならいいけど……』

どこか意味深な物言いに戸惑いながらも頷く。

「……じゃ、また」『うん、またね』

彼と別れの言葉を返し、離れていく。

車に乗って動き出したのを確認してから、私も建物に入る。

今日は楽しかったな……、なんていう嬉しさを胸に秘めながら。