39 ページ39
『ーーすごい』
自然と口から漏れ出た言葉。
直ぐ目の前には、青い宝石のように散りばめられた摩天楼が。
高い場所から覗いているからか、空気が薄い。
それさえも忘れてしまうほど眩い光が目を奪う。
現在、私は冴くんに連れられ、日本で有名な展望台にいる。
有名というだけあって、高さが数百メートルもあるという。
『冴くん。……すごく綺麗だね』
隣に立つ彼の方を見て声を掛ける。
「……ん、本来はビルの照明だけどな」
『それでも、夜だと見え方も違ってすごいって思うな』
それに、と続けて言う。
『冴くんはこの景色を私に見せたかったんでしょ？』
「……この景色を、というか、Aと2人で見たかったから連れてきただけだ」
その言葉に一瞬固まる。
彼の言ったことを頭の中で反芻すれば、じんわりと胸が温かくなるのを感じた。
『そう、だったんだ』
笑みを溢しながら、冴くんを見ていると。
「……俺は、
『え？』
不意にそんな言葉を口にした。
ふわり、と髪を撫でられる。
ーー正直、彼の言っていることがよく分からなかった。
だって、私にとっての冴くんは……。
『……私の答えを聞いても意味ないんじゃないかな。だって私の中にある冴くんは、誰の言葉にも影響されない人だから』
目の前の彼の目を真っ直ぐに見つめて、そう言った。
「……A」冴くんは私の名前を呟いた後、黙った。
どこか、懐かしむような、寂しげな表情が垣間見える。
冴くんは、私の髪を撫でていた手を今度は頭に移動させた。
『……う、わっ』
そのままわしゃわしゃと撫でられ、軽く戸惑う。
『さ、えくん……』「……くだらねぇこと聞いたな」
ぽつりと吐いたその言葉には皮肉じみた色を含んでいた。
「
『え、……え……？』「冗談だ」
冗談と言っているけど、目が冗談を言ってるようには見えないんだけど……。
『あ……、ありがとう？』
首を傾げつつ、感謝を告げる。
……でも、急にどうしたんだろう。
冴くんに何か、あったのかな。
けど、冴くんの表情からは何も読み取れない。
少し、違和感と疑問が募ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：メビウス | 作成日時：2023年9月29日 23時
