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冴くんに半ば強制的に連れられ、向かった先はーー。

『ーーべ、ベンツ……?』

いかにも大手社長や有名人が乗っていそうな車。

高層ビルの駐車場に所狭しと停まっている、が。

『さ、冴くん……。この車って……』「安心しろ。お前と乗るために特注で頼んだ車だ」

『い、いや、そういう意味じゃなくて……』

戸惑う私を他所に、冴くんに手を引かれ、あっという間に車の中へ。

車内は思ったより広かった。けど、冴くんとの距離がかなり近い。

……一体どこに行くつもりなんだろう。

と、私の感じていることを察したのか、冴くんはどこか不満げに眉を顰める。

「……嫌か、俺と出かけるのは」『えっ……』

意外な言葉に、意をつかれる。

冴くんにはそんな風に見えたのかな……?

『そんなことないよ……。けど、余りにもいきなりすぎてちょっと頭が追いつかない、というか……』

そこまで言って一度、息を吐き、続けた。

『その、今からどこにいくのか教えてもらえる……?』

私の問いに、冴くんは少し驚いたように目を見張った。

そして、少し考え込み口を開く。

「……本当は、着くまで言わない気だったがーー。まず装飾品店に行く予定だ」

まず、と言うには、複数箇所回る予定なのだろう。

車が動き出す。動き出しても、殆ど揺れがないのはすごい。

冴くんはゆっくりと脚を組む。それだけでも様になってしまう。

しばし、その姿に目を奪われていると、不意に私の視線に気付いたのかこっちを見た。

ばっちり目が合う。冴くんはどこか余裕そうに口の端を引き上げた。

『ごめん、見過ぎた……』「何で謝んだ。てか俺のことだけ見てろ」

『……』自然と顔が赤くなるのを感じ取る。

偶に直球でこんな(たぐい)のことを言ってくるのはズルい……。

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作者名:メビウス | 作成日時:2023年9月29日 23時

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