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潔くんと駅で待っていると、自分の乗る電車が来た。
潔くんに別れを告げながら電車に乗る。
中は帰宅ラッシュのせいか、酷く混雑している。
私はできるだけ体を縮こませながら壁に寄りかかった。
そのまま目を閉じる。
仕事の内容を思い出しながら、電車に揺られていた。
ーー
電車を降り、そのままバス乗り場へと向かっていると。
プルルルッ いきなりバッグから音が鳴り、ビクッと体を跳ねさせた。
電話……?誰から……。そんな疑問が浮かびながら、スマホを取り出す。
画面には……。『……冴、くん?』
糸師冴と、表示されていた。
もう既に3回電話をくれていたハズ、だけど……。
眉を顰めつつ、電話に出ることに。
『ーーえっと、もしもし、冴くん?』
おずおずと尋ねると、少し間を置いて、声が届いた。
“A。突然悪い。今駅にいるか”
『え、いるけど……、何で知ってるの?』
純粋な質問をぶつけた時。
「ーーやっぱりAか」
直ぐ後ろから声がした。
同時にポン、と肩に手を置かれる。
『……っ!』声にならない悲鳴を上げて反射的に後ろを振り返った。
そこには。『さ、冴くん……!?』
先刻まで電話で話していた筈の冴くんの姿があった。
あまりにも状況を呑み込めず、視線を冴くんとスマホに行き来させていると。
「どっか行ってんなら連絡しろ。お前を探すのに半日掛かった」
どこか不満げに顔を顰めてそう言った。
『え……?私を探してた、ってどういう……』
私の問いには答えず、代わりに腕を掴まれ引き寄せられた。
冴くんとの距離がグッと近くなる。
彼はまつ毛の長い目を細め、口を開いた。
「夜まで付き合え」『ーー……へ?』
私の口からは、無知からなる声だけが漏れた。
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作者名:メビウス | 作成日時:2023年9月29日 23時