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ボウリング対決の真っ最中。
私は設置されてあったソファーに腰掛けながら皆の様子を眺める。
途中、馬狼くんを発見したことで、更に盛り上がりを見せていた。
現在、千切くんの番である。
彼の投げたボールは真っ直ぐにピンの集まりに向かい。
カコン!大きい音を立ててストライクが決まった。
珍しく、無邪気に笑う千切くんの周りにブルーロックメンバーが集まり歓声を上げている。
その様子を見ながら思わず笑みを浮かべると。
「A!」千切くんが私の方まで来て手を出された。
彼の意図に気付いた私は直様自身の手で彼の手を軽く叩いた。
パチン、と柔らかい音が生まれる。
『ナイスストライク、だね。千切くん』
私がそう言うと、彼は隣に座りながら答える。
「ん、サンキュ。久し振りにやるからちょっと心配だったけど」
そこで私の方を見て悪戯っぽく目を細めた。
「Aが何回もボール外すのは驚いたわ」
『……先刻のことはどうか忘れてください』
あまりの羞恥心に顔が熱くなっていくのを感じた。
「Aがあんまりも外すから、珍しく馬狼がキレてたよな」
『本当に……、あんなに後ろから圧掛けられるとは思わなかった……』
背中に強く貫いた馬狼くんの視線が思い出され、苦笑いを溢す。
「……それでも、Aが楽しんでるみたいでよかった。何か最近、疲れたような顔してたし」
『……』彼のさり気ない言葉に私は押し黙った。
まさか、気付かれてたなんて……。
千切くんは先程の笑顔から一転して、真剣な表情を浮かべる。
「……“
酷く落ち着いた声、対してその瞳はしっかりと私を見ていた。
私は、何も言えないまま、唯、心臓だけがうるさく脈打つ。
ーー彼に相談すれば、少しは気持ちが楽になるかもしれない。
……けど。
『ーー……心配してくれてありがとう。ちょっと疲れてただけだから、気にしなくても大丈夫だよ』
臆病な私は笑顔で誤魔化すことしかできなかった。
そんな私を、千切くんは無理に問い詰めず、そっか、と笑う。
その笑顔には、悲しみの色が混じっていた。
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作者名:メビウス | 作成日時:2023年9月29日 23時