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「……っ!大丈夫か、A!」
乙夜くんの後を歩いていると、そんな声がした。
かと思えば、一瞬で目の前に声の主が現れる。
「何された!?どっか触られたか!?怪我とかしてないよな?」
まるで機関銃のように息継ぎもなく、まくし立てる。
『う、うん、大丈夫。だから落ち着いて、玲王くん』
いつも冷静で焦ることなんて見たことない玲王くんが珍しいな……。
私の言葉に玲王くんはハッとしたように目を見開いた。
「……あ、わる、い。気が気じゃなくて……」
細い指で自身の顔を軽く覆う。心做しか、耳が赤い気がする。
『……でも、心配してくれてたのは嬉しかった、から。ありがとう』
彼に正直な思いを告げると、玲王くんは何だか嬉しそうな、怒ったような……、複雑な表情になった。
その変化が異様に気になり、どうしたの、と聞こうと口を開くと。
「A〜」言いかけた言葉は、名前を呼ばれる声によって言えずじまいになった。
声のした方を見れば、約束をしていた潔くんや、蜂楽くん、千切くんと、他にも
意外と皆、サッカーのことから離れてるんだな、なんて安心する。
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作者名:メビウス | 作成日時:2023年9月29日 23時