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【Aside】
『……え?“遊びに行かないか”?』
私は目の前の彼の言葉を反芻した。
突然のことだから、理解が追い付かない。
目の前の彼ーー、千切くんは続ける。
「ほら、明日から2週間、俺ら選手は
『えっ、と……』
私は思案するように視線を落とす。
すごく、嬉しいお誘いだけど……。
『申し訳ないんだけど、私は
私がそう呟いている途中に。
「別に構わないぞ」
頭上から声がしてビクッとなる。
向かいにいた千切くんが顔を上げて口を開いた。
「……絵心」
『え、に、
驚きつつ後ろを振り返って確認する。
そこには、画面越しーーではなく、そこに立つ
どこか表情の読み取れない顔で口を開く。
「U-20日本代表に勝利した賞金で、Aの分の仕事は機械でまかなえるから。選手のいない2週間はAがいなくても何とかできるよ」
淡々と放つその言葉に私は目を瞬かせる。
『そ、それってつまり……』
「Aも仕事休んでいいよ」
その言葉にドキッと心臓が跳ねる。
そんなことを言われるとは思ってなかったから、かなり動揺しているようだ。
自然と口をついて出たのは。
『……あ、有難う、ございます』
率直なお礼の言葉だった。
私は数秒の間、静かに息をしていると。
「A」名前を呼ばれて、振り返った。
「それで、行く?一緒に」
サラ、と綺麗な長い髪を揺らして首を傾げる千切くん。
私はぽかんと口を開けた後、慌てて頷く。
『う……、うん……!行きます……!』
私の返答に、千切くんは満足気に口を引き上げたのだった。
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作者名:メビウス | 作成日時:2023年9月29日 23時