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「Aちゃんが……、怯えた表情を……」
氷織はどこかぼんやりとした表情で呟く。
俺は無言で頷き、先刻のことを思い返す。
俺がマネージャーに声を掛けた時、彼女はあからさまに反応した。
まるで、何か怖いものに出くわしたかのように。
それに、顔色も悪かった気がした。
「今までAがそんな顔を俺達に向けたことなかったよな。
……もしかすると、潔に会う前に何かあったんじゃーー」
「ーー何か、って何やろ?」
千切の呟きに氷織は首を傾げる。
そして、俺の方に視線を向けた。
「潔くん。他にAちゃんのことで不審な所はあらへんかった?」
その問いに俺は慌てて記憶を掘り返す。
暫くして。「……あ」
あることを思い出した。確かあの時……。
「……手に、スマホを持ってた」
「スマホ?」
千切の表情が訝しげになる。
「ああ……、スマホを見てるときなんて殆ど見掛けなかったのに、その時だけ持ってた……」
ほんの些細な気付きだけどーー、もしかしたら何かあるんじゃ……。
「スマホ……、誰かと連絡を取ってたりとかか……?」
「逆に、連絡が来たとかかもしれへん」
俺も一緒になって考えてみる。
が、結果は何も出なかった。
そもそも、俺達選手はマネージャーのことなんて何も知らないんだ。
話をする時間も限りがあるし、こっちが喋っていることが多い。
マネージャーは、優しく笑いながら話を聞いている印象だ。
俺は必死に唸りながら考えていると。
「……ほんなら、明日からの
不意に氷織が口を開いた。
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作者名:メビウス | 作成日時:2023年9月29日 23時