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【潔side】
待って、という言葉は彼女には聞こえていなかったようで。
どこか逃げるように立ち去っていった。
俺は、暫くその場で呆然としていた。
何だかいつものマネージャーじゃない……?
何か、あったのか……?
マネージャーに対する心配がどんどん膨れていく。
何もないといいんだけど……。
俺はそう願いながら、食堂へと向かった。
……食堂に入ると耳に賑やかな声が入ってくる。
俺は辺りを見渡していると。
「お、潔ー、遅かったじゃん」
自分の名前を呼ぶ声がして、そっちを見る。
視線を送った先には、ひらひらと手を振って笑みを浮かべる千切と、人が良さそうに柔らかく笑う氷織が一緒にいた。
「おー」と笑みを浮かべつつ、2人の方に行く。
「えらい遅かったなぁ。長風呂しとったん?」
小さく首を傾げて氷織が聞いてくる。
「いや、途中マネージャーと会って……」
そこまで言って俺はハッとなる。
マネージャーの、俺を見た時の酷く怯えた表情を思い出してしまった。
急に口ごもった俺を見兼ねて、千切が口を開いた。
「……Aと、何かあったのか?」
その言葉に、氷織の目が大きくなる。
「……何か、って言われると本当に小さなことだけど、ちょっと気になったことがあってさ」
ボソリと小さな声で呟くと、2人の表情が一変した。
表情を強ばらせて、俺を見詰めてくる。
「Aちゃんのことで気になることがあったなら教えてくれへん?」
氷織のやけに静かな声に、俺は戸惑いながらも、先刻のことを話した。
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作者名:メビウス | 作成日時:2023年9月29日 23時