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U-20側のCKから試合が再開した。
冴くんによるキックで全員が動き出す。
まず最初に凛くんがオリヴァさんの元についた。
多分凛くんは冴くんが出す回路を考えたのだろう。
彼の予想通り、ボールはオリヴァさんの元ーー
ではなく、士道くんの走る先に向かっていた。
それも、オリヴァさんや凛くんに届かない距離で。
冴くんはそこまでを見越して蹴ったのだろう。彼の圧倒的な判断力と技術力に目を奪われる。
ボールは士道くんの手に渡るのかーー、と思いきや。
「
彼はーー、潔くんは終わっていなかった。
士道くんのヘディングより先にボールを蹴る。
宙に浮いたボールは氷織くんが受け取った。
潔くんは、凛くんの動きを予想して先回りに動いていたのかな……?
そうでもしないと、今の動きはできないだろう。
これで最後のカウンターが始まる。
氷織くんは得意の観察眼で周りを見る。誰にボールを渡すか見極めている。
するとそのとき。凛くんが、彼からボールを奪ったのだ。
予想外の展開に、一瞬頭が追いつかなかった。
どうして凛くんが……!?混乱する頭を他所に、場面は次々と変わっていく。
凛くんの様子が一変した。いつもの落ち着いた表情が嘘かのように、舌を出して焦点の合わない目になったのだ。
その姿はまるで餌を貪る獣ようで、自然と背筋が寒くなる。
更に、彼のプレイスタイルすら変わっていた。
いつも彼は自身にとって1番効率の良い動きをするはず。
なのに今の彼はファウルギリギリかつ、強引な手段で敵を躱していた。
見ていて不安がグルグルと渦巻く。
と、横で
「最も強みとする武器を引き出し、それを潰すコトを至上とするプレーか……。それがお前の“FLOW”か、糸師凛。ーー狂ってんなぁ」
これが……、凛くんの、“FLOW”……?
凛くんのプレーの“固い殻”を破るような、そんな感覚を感じた。
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作者名:メビウス | 作成日時:2023年9月29日 23時