episode11 ただ前へ ページ3
涼介side
大ちゃんは感情を爆発させたあの日以来、泣かなくなった。
毎日笑っていた。
不自由な左手だけしか使えない生活に向き合って。
ご飯を食べるのもスプーンを使って左手で。着替えもこなしていた。
とにかく大ちゃんは自分でやりたがって、1つずつできるようになるたびに
大貴「ねぇみてた?今できたよ!」
って可愛い笑顔で笑うんだ。
そんなある日のこと。
大貴「ねぇ涼介。そこのローテーブルに乗ってる画材取ってくれない?」
右手が麻痺してから、大ちゃんが自分から絵の事に触れたのは初めてで驚いた。
涼介「ん?いいよ。」
そんな驚きの色が見えないように、いつも通りに接した。
大貴「右手が使えた時みたいに上手くは描けないと思う。……でも諦めたくないんだ。」
そう言った大ちゃんの瞳はまっすぐに筆を見つめていた。
涼介「俺に手伝える事、あったら言ってよ?」
大ちゃんは目尻にシワを寄せてにこっと笑ってから筆を左手で持ち直し、絵の具を付け、真っ白な紙に筆を走らせた。
手は震えていて、まっすぐじゃない。
一本線を引くのにも相当な集中力がいるみたいで、額には汗が滲んでいた。
大貴「………できたっ!」
さっきまで真っ白だった紙の真ん中には赤の太い線が一本。
大貴「涼介の目の色だよ。俺、涼介の目の色大好き。」
君はどこまで強いのだろう。
自分の夢を叶えるために必要不可欠なものを無くしたのに、もう前を向いて笑っている。
ただ前を見つめる大ちゃんの目は綺麗だった。
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なつめろ(プロフ) - 新作とともに読ませていただきました。本当にどちらも素晴らしい作品で涙が止まりませんでした。新作の方で涼介くんも前を向いて頑張っていることが知れてなんだか嬉しい気持ちになりました。これからも応援しています (2020年1月8日 0時) (レス) id: 23d01b0f83 (このIDを非表示/違反報告)
凪(プロフ) - はっちゃんさん» そのような感想を頂けると書いたかいがあります、、( ; ; )最後まで読んでくださりありがとうございました! (2020年1月7日 17時) (レス) id: 1693d0e47d (このIDを非表示/違反報告)
はっちゃん - 感動する小説やドラマ等を観ても泣きたくても泣けなかった私ですが、この作品ではすっごい大号泣しました…本当に面白くて泣けました。執筆お疲れ様でした。 (2020年1月7日 14時) (レス) id: 0d57913dc4 (このIDを非表示/違反報告)
ADaiDaijump(プロフ) - 感動です( ; ; ) (2019年12月26日 15時) (レス) id: 89dbc58fb6 (このIDを非表示/違反報告)
まちゃ(プロフ) - 初めて読んだ時はまさかこうなるなんて思ってなかったので、実際の終わり方凄く感動して泣きました!あんなに元気だったんだよなぁって思いますよね。とても素敵な作品をありがとうございました!楽しませてもらいました! (2019年11月15日 21時) (レス) id: 5d53199746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あむ | 作成日時:2019年4月11日 23時