２３話 望side ページ23
…
｢どうせお前あれやろ？
自分だけ1人だ惨めな私とか思ってんのやろ？｣
違う、こんなことを言いたかったわけやない。
なんでこの期に及んで俺は。
一緒に帰ると言ったのに置いて行かれて。
それでいて追いかければなんで来たなんて冷たく返されて。
ついカッとなってしまった。
それを聞いた君の目は一瞬悲しげな瞳に変わった後怒りを宿したのが分かった。
絶対に言ってはいけない言葉だったっていうのはまず間違いなくて、君を傷つけてしまったという事実に俺は打ちのめされてしまっていた。
｢悪い？
30に近づくとな焦り始めるもんやねん。
望にはわからんやろうけどな！｣
めったに怒ることがないAからの俺を拒絶する言葉。
そんな状況にごめんということしか出来ない俺は情けない。
どうすれば、なんて必死に思考を巡らせていたら望は悪くないごめんって謝る君が無理に笑顔を作っていて。
それで事実だから仕方ないと言って同意を求める君に違う、本心でそんなこと言ったわけじゃないって伝えたいのに口から出るのは弱々しい声。
こんな状況でも俺はなにも…。
俺が立ち尽くしてる間に早口で仕方ないとまくし立てる君はどんどん目が潤んでいって涙がこぼれ落ちそうになっていく。
もう見ていられなくて気がついたら口走ってた。
1度目は自分でも確認するようにたどたどしく。
君にえ、と聞き返されたから今度は強く。
｢せやから、俺がお前のこと貰ったる！｣
散々考え抜いた計画なんて丸潰れ。
かっこよさとかメンツなんでどうでもいい。
どんな形であれ君に伝えられるのなら。
やっと伝えられたと安堵したのもつかの間君は何故か首を傾げていた。
その理由は次に発した言葉で分かった。
｢望同情で言ってんなら…。｣
同情なわけないやん。
どこまでもお前は鈍感なんやな…。
そんなところさえも愛おしく感じるあたり俺はお前にどんだけ惚れてんのやろ。
伝わらないのなら直接言葉にするしかない。
何年越しか分からない好きの2文字を伝えよう、君に。
…
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作者名：美麗 | 作成日時：2017年12月16日 1時
