１話 ページ1
…
｢それでは新郎新婦によるケーキカットです！｣
盛り上げる司会者のその言葉と同時に会場全体から大きな拍手が送られる。
中央に見える主役の二人は本当に幸せそう。
見つめあって微笑んだりしちゃって…さ。
今月二人目か…。
新郎新婦の輝く笑顔とは裏腹に私の脳内でその言葉がチラついてる。
なんなんやろ。
この二十代後半になって急に始まる結婚ラッシュは。
まるでこのタイミングを待っていたかのように。
そんなわけで私のボーナスは御祝儀に飛んでいってしまった。
新しい携帯に買い換えようと思っていたけどそれは次の時まで待たんきゃやな…。
その時までこのヒビが入った画面とはおさらばできない。
おめでたいことには変わりはないんやけどさ〜。
こんなんでもちゃんとおめでとうって思ってるよ？
それでも素直に祝福する言葉を送れない自分がおるのは事実で。
そういう相手がいない私は出費がかさむばかりやし、得どころか損ばっか。
それに結婚式で幸せそうなカップル見ると自分が惨めに思えてくるんよね。
お前は一人ぼっちだって。
そんなこと考えてる時点でダメなんだろうけど。
二人のケーキカットの写真を携帯やデジカメにおさめる人達はたくさんおるけど私にはそんな気が起きひんかった｡
少し離れたところから傍観してるだけ。
だってみんな余裕があってお相手がおる人達ばっかりなんやもん。
だから自分以外の他の人の幸せを願えるんよ。
またや…。
そうやってすぐ卑屈になってまう自分に嫌気がさす｡
はぁ…。
ため息をつきまたやってしまったと後悔するのも毎度のこと。
最低だってことも分かってる。
他人の幸せを願わずにグダグダ考えてるだなんて。
結婚はまだいいやなんて言ってるうちにあっという間に来月30を迎えてまう私。
周りがどんどん結婚していく中独り身で恋愛すらご無沙汰になってる。
最後にお付き合いしていたのは……。
いつやっけ…？
・
ああもう考えるだけで恐ろしい。
こんなこと考えるのやめや、やめ。
流石の私にも焦りが募りだした。
そろそろやばいよな…と。
…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：美麗 | 作成日時：2017年12月16日 1時
